博報堂生活総合研究所 みらい博2024 ひとりマグマ 「個」の時代の新・幸福論 博報堂生活総合研究所 みらい博2024 ひとりマグマ 「個」の時代の新・幸福論

生活者インタビュー

ひとりの方が、 ホテルステイを 細部まで堪能できる。

まろさん

まろさん

(31歳)

1992年、東京都生まれ。ひとり時間の楽しさを多くの人に伝えたいと、2017年にひとり時間の過ごし方を提案するメディア『おひとりさま。』を設立。Instagram(@ohitorigram)ではひとりでこそ行きたい、お出かけ情報を日々発信。ホテルや飲食店とコラボし“ひとり向けプラン”の企画・プロデュースも手掛ける。自身が原案を務める『おひとりさまホテル』は、現在3巻まで刊行。『このマンガがすごい!2024』オンナ編で18位にランクインするなど、女性層中心に人気を博している。

Ⓒまろ マキヒロチ/新潮社

「おひとりさま」は属性から時間へ

「いつも」を「特別に」―設計会社に勤める塩川史香は、ホテルで過ごす「おひとりさま」の時間をとても大切にしている。友人たちもそれぞれホテルに対するこだわりがあって……
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私が原案を担当しマキヒロチさんが描く漫画『おひとりさまホテル』はこんなあらすじの作品です。元々私の活動のコンセプトは「今日は、ひとりがいい」。『おひとりさまホテル』の原案者というと「ずっと誰ともしゃべりたくない人」だと誤解されることもあるのですが、誰かといる時間は好きなんです。同時にひとりの時間も好き。その両立ができることを伝えたいです。
かつては「おひとりさま」というワードが独身を指していたかもしれませんが、最近は「ひとり時間」という定義に変わってきている感触があります。同居家族の有無にかかわらず楽しむスタイルを広めたいです。

ひとり時間で得られたこと

なぜ、ひとり時間の過ごし方について提案をしていきたいかというと、私自身がひとり時間によって得られたものがたくさんあったからです。例えば、人とコミュニケーションを取るのは大好きなのですが、その状態が続くとエネルギーを消耗し過ぎたり、自分を見失いかけることがあります。でも定期的に“自分と向きあう時間”を取ることで、リラックスして休めたり、自分が何をやりたいか、改めて自分に問いかけてみて、進むべき方向を確かめることもできます。また、一段とフットワークが軽くなりました。誰かと予定が合わなくても、ひとり旅で行きたいところに行けるようになり、街や人と出会う機会に恵まれましたし、知人からの突然の誘いにも乗ってみるなど、「何事もとりあえずやってみよう」の精神が芽生えました。以前、女優のクロエ・モレッツさんが、日本の外食の個食文化を絶賛していて、「ときには孤独を感じることが大切だ」と言っていたんです。確かにひとり時間で、周りの人のありがたみを改めて知ったり、孤独と向きあうことも大事だなと思っています。

欧米でも流行る「Me Time」

そんなひとり時間を欧米では「Me Time」と呼んでいます。家族を持つお母さんたちもSNSなどで活発に提唱しはじめているようです。彼女たちも配偶者やお子さんと一緒にいることを決意しているけれど、ひとりの時間が欲しい。日本ほど浸透していない“おひとりさま”の文化が、欧米でも広がりつつあることが、面白いなと感じています。

ずっとひとりはいけない

一方、「ひとりで旅をしていると、寂しくなることもあります。どうすればよいですか」という質問が来るのですが、もし継続的にその感覚が続いているのであれば、絶対にひとりになってほしくないです。そういうときにひとりでいるのは危険なときもあると思うからです。
また、ひとり時間が長過ぎると、どんどんワガママになっていく危険性もあるなと思っています。ひとり旅だとマイペースに自分の好きなことができて良い一方、誰かと行くことの不自由さを味わうこと、それにコミュニケーションをして妥協することも大事です。そうしないと自己中心的な人間が生まれることを危惧していて、私も気をつけています。やはり、ひとり時間と誰かといる時間のバランスは大事だと思います。

ひとり時間をつくるレッスン

誰かと一緒の時間は十分だけど、ひとり時間にはなかなか踏み出せない人にとっては、夕食だけ誰かと一緒にとる形態の旅もいいかもしれません。ある知人は友人と別々にハワイに行って、夕飯だけ一緒にしたり、日によっては別々に食事したりしていました。突然別行動になるのではなく、あらかじめ計画のなかに入れておけば孤独感を味わわずに済むでしょうし、一緒になるタイミングで互いの単独行動がどうだったかをシェアするのも楽しいですよね。ひとり旅と人との旅を完全に分ける、ということがまだ難しい人にとっては、中間的なひとり時間をつくって徐々に慣れていくような、面白い提案ができそうです。