2023.07.04

コミック、ゲーム、音楽から消えゆく年齢の壁 行動データで判明

 

執筆者:生活総研 上席研究員 伊藤 耕太

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

意識や価値観について、年齢層による差が消えていく「消齢化」。実は、その影響が行動となって意外なところにも現れているという。年代・世代マーケティングの現状を追う特集の第2回は、博報堂生活総合研究所の研究員が、コミックやゲーム、音楽にまつわる生活者の行動データから消齢化の実態に切り込む。

コミックやゲーム、音楽の楽しみ方から「消齢化」の実態を追った(画像/Shutterstock)

「20代は○○な人」といったように、価値観や嗜好を年齢層によって塊として捉えることはよく行われます。しかし、以前は大きかった年齢層による価値観や嗜好の違いが、実は年々小さくなっていることが分かってきました。

博報堂生活総合研究所(生活総研)では、この事象を「消齢化」と名付け(2023年1月19日公開)、研究を進めています。30年にわたる長期時系列調査「生活定点」のデータから確認されたこの現象の実態を、今回はコミックやゲームのアプリ利用、音楽に関する検索といった“行動”のデータから検証してみましょう。

▼参考記事
30年データで突き止めた新ワード「消齢化」 消えゆく年代の壁

若者から中高年までコミック、ゲームを楽しむ時代

国勢調査における15歳未満の人口は1980年代以降、減少を続けています。出生数も減少を続けていますから、“少年”や“少女”の数は今後も減り続けていくことになります。

一方で近年、少年誌で連載されるコミックやそれを原作としたアニメーション作品、映画のヒットに注目が集まっています。想定される読者や視聴者がどんどん減っているなら、ヒットは難しくなるように思えますが、実際に起きているのは人口動態から予測されるのとはむしろ逆の事態なのです。一体何が起きているのでしょうか。まずはスマートフォンにおけるコミック系アプリの利用ログデータから探ってみましょう。

次のグラフはヴァリューズ(東京・港)の保有するスマホの利用ログデータ(使用許諾を取得したユーザーのアプリ利用データ)から、過去7年間の9月におけるコミック系アプリとゲーム系アプリの年齢層別の推計ユニークユーザー数(各カテゴリーのアプリを月に1度でも利用したモニター実数を基に全スマホ利用者数に割り戻して計算した推計人数)を算出したものです。

左側のコミック系アプリの利用データに注目すると、全年齢層においてユーザー数の増加が認められます。特に40代と50代について見ると、2016年時点ではユーザー数は80万人を下回っていたものの、その後一貫して増加が続いた結果、22年時点で40代は約406万人、50代は約230万人に達しています。

また、右側のゲーム系アプリの利用データにおいては、20~40代のユーザー数が19年以降600万人前後で横ばいとなっているのに対して、50~60代のユーザー数は16年以降一貫して増加が続き、22年時点でそれぞれ約509万人、約297万人にまで増えています。

こうしたユーザー数増加の結果を、年齢層構成の変化として捉えてみるとどうなっているでしょうか。仮に40代以上を中高年として、年齢層別構成比の推移を示すグラフに強調処理を施してしてみましょう。

ご覧のように、各アプリのユーザーにおいて中高年が占める割合はどんどん高くなっています。22年にはコミック系アプリの約41.7%、ゲーム系アプリにおいては56.2%が中高年によって占められています。

少年少女としてイメージされる10代以下のユーザーは、このデータには含まれていませんが、その上の20~30代の“若者”のコミック、ゲームアプリの利用構成比は徐々に低下しています。その一方で、さらに上の“中高年”の構成比が増加し続けているのです。

こうしたデータからは、「コミックやゲームに興じているのは子どもや若者だけ」といったかつての印象とは大きく異なる状況が出現しており、年齢層の壁が崩れる「消齢化」が、コミックを読んだりゲームをプレイしたりといった行動面においても、進んでいることが見てとれます。

“最近の歌手”をチェックしているのは誰?

コミックやゲームと並んで、主に若者によって楽しまれているというイメージのある流行の音楽についてはどうでしょうか。生活総研による記事「11年間のカラオケ歌唱データで判明! 『消齢化』の実態」(23年4月27日公開)では、年齢層別のカラオケ歌唱ランキングのデータを分析し、10代から60代までの全ての年齢層で歌われる曲が増えてきているという研究結果を報告しました。

▼参考記事
「全年齢層で共通して歌われる曲」は10年間で5倍に増加

歌唱データからは、現在10代の生活者が1990年代(生まれる前)にリリースされた過去の曲をよく歌うようになっているということや、逆に60代の生活者が2020年代というごく最近のヒット曲を歌うようになっていることが明らかになりました。

海外の生活者を対象に行われたある研究では、音楽の趣味は30代前半までに固まり、それ以降は新しい音楽を聴かなくなるという結果が出たといいますが、歌唱データが示す実態はそうしたイメージと大きく異なっていました。どうやら日本の中高年の生活者は、新しい音楽を能動的に取り入れているようなのです。

例えば、音楽番組を見ていてなじみのない歌手が登場したとき、生活者はどのような反応をしているのでしょうか。知らないからチャンネルを変えるのでしょうか。それとも他の行動をとるのでしょうか。

次のグラフは過去4年間の「NHK紅白歌合戦」の当日12月31日に、その日に出演している主な“初出場者”の名前を検索した人の推計人数を、年齢層別に視覚化したものです。

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

 

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