博報堂生活総合研究所 みらい博2024 ひとりマグマ 「個」の時代の新・幸福論 博報堂生活総合研究所 みらい博2024 ひとりマグマ 「個」の時代の新・幸福論

新しい家族の形? 「円満別居婚」の世界

生活者インタビュー

ひとりドンキウォッチャーさん(43歳)

北海道在住。新聞社勤務。中部地方に在住の妻・息子と円満別居中。趣味は映画館で映画を見ること。

 

 

 

家族と一緒の場所じゃ、できないこともある

以前は地元の新聞社に勤めていましたが、さらなるローカルニュース × デジタル媒体の可能性を追求するため、もっと人口と経済規模の大きい地で働いてみたいと思っていました。妻からはじめ躊躇されたものの、最終的には応援してくれました。コロナ禍前に縁もゆかりもない北海道に単身で転職・移住しました。子どもが生まれる前に一度家を建てようかと思ったことがありましたが、ひとつの場所に縛られない方が生命体として強いんじゃないかと思い、家族が一か所にとどまっていなくてもよいのではと考えるようになりました。

世のなかは夫婦同居が当たり前の雰囲気ですが、結婚に消極的な20~30代からは羨ましがられることもよくあります。そもそも同居って、古い民法の考え方だと思っています。同意が大切なので「別居婚マッチングアプリ」とかつくれないかなって、今考えています。

ひとり時間が増えたら、飲み会のストレスが激減!?

結婚している人にとって、ひとり時間は”幻”。だから、単身で引越してひとりの時間が増えたのは、素直にうれしかったです。地元在住時代は会社の飲み会のときに、「タバコのにおいが気になる」「話が面白くない」などストレスに感じていたんですが、ひとりの時間が増えたことによって、そんな飲み会に対しての心持ちに変化がありました。

以前は家族と過ごす時間だったのが、今はまるまる自分の時間になったことで、気持ちにゆとりができたんだと思います。飲み会の頻度自体は以前と変わらないんですが、今は「自分から働きかけなくても人と一緒にいられるなんてありがたいな」「人と過ごす貴重な時間だな」と感じます。

 

 

インプット名人さん(44歳)

北海道在住。東京の不動産事業会社にリモートワーク中心で勤務。妻・娘とは徒歩5分くらいの札幌市内のマンションで円満別居中。

 

 

 

愛猫のために別居婚

僕は結婚前から3匹の猫を飼っていたんですが、妻が猫アレルギーで。妻と結婚した時点で、一緒に住めないという前提がありました。一度は一緒に住みましたが、やはりしんどくて。札幌に来る前に住んでいた東京でも別居していました。妻と当時生まれたばかりの娘が三軒茶屋に、僕が浅草に住み、週末に会いに行く週末婚のようなスタイル。ただそうすると、ほぼ妻のワンオペ育児になってしまって。元々妻が札幌出身だったので、育児に協力してもらえそうな親御さんや友だちもいる札幌に引越しました。

実は、3匹の猫のうち2匹がこの1年でバタバタと死んじゃったんです。残りの1匹が死んじゃったら、家族と一緒に住むこともあり得る状況に。でも、妻の方から「寂しいし、もう1匹猫を飼ったら」と提案があり1匹新たに迎えることになりました。言葉に出してはっきり確認しあってるわけじゃないけど、これくらいの距離感が僕らにとっては一番収まりがいいと捉えあっている気がします。

妻との最適なトレードオフが基盤

この暮らし方は、お互いの前提を擦りあわせられているかどうかが大前提。うちはそれが相当なレベルでできていると思います。例えば僕は好奇心を失うと不機嫌になるので、家族と離れてでも心が満たされる面白い仕事をしている状態でいてほしい、というのが妻の願いでもあります。一方、妻は子育てマニアみたいなところがあって、絶対に自分の手で育てないと嫌。シッターに預けるのもあり得ません。僕なりに子育て論があるにしても彼女のそれに勝ることはないので、僕も受け入れています。そういうレベルでちゃんと突きあわせていけば、おのずとお互いの境界線とかが守れる領域で決まってくる。僕の場合、ひとりになることが家族のなかでも優先、尊重されている。奥さんはひとりになれないけど、それに勝る幸せを子育てに120、150%コミットすることによって勝ち取っているんです。

加えて僕はひとりになって仕事に打ち込めるので、経済的にもゆとりができます。だからこそ彼女は専業主婦に専念でき、生活が豊かになる。その合意がとれていること、それだけのコミュニケーションを家族のなかでやっていることが重要だと思います。もちろん僕は欲しいものを120%手に入れているわけではありません。ひとりを優先することによって、娘と過ごす時間は減りますから。だからいいとこどりなのではなく、トレードオフしてこそ満喫できる暮らし方だと思います。

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