インタビューから読む
未来の時間意識
生活者インタビュー
室積 えりかさん
フラワー&グリーンショップ 「ムロマメ舎」 店主

45歳女性。長らく建築業界に勤めていたが、花屋として転職するため離職。数年間花屋で修業を積んだ後、戸越銀座を拠点にしたフラワー&グリーンショップ「ムロマメ舎」をオープン。切り花やブーケ、アレンジメントの他、店舗のディスプレイや観葉植物を使った空間の演出なども手掛けている。

日によってバラバラ。
お店の営業時間を固定しない

以前は、お店の営業時間を10時-18時に固定していたのですが、現在は日によってオープン時間が異なることを、事前にInstagramで告知しています。5時間開けている日もあれば、1時間しか開けられない日もあります。「限られた営業時間でも、お客さんは来てくれるのかな?」という実験的な部分もあったのですが、ふたを開けてみるとInstagramを見てくださっている人はとても多くて、実際にInstagramに明記している時間をチェックして、お店に来てくださります。
オープンしている時間が30分や1時間しかないのであれば、本当は休店日にしてしまってもいいのかもしれません。でも、たった30分でも、その時間は自分にとって余裕のある時間なんですね。

制作の時間と接客の時間を分ける

かつては、「今日中に納品してほしい」といった急なオーダーが入ることも珍しくなく、自分の時間をかき回されているようなイメージがありました。
また、お店をオープンしながら、お客様に依頼されたオーダー品を制作していると、制作途中に「こんにちは」「やってますか?」という具合に、お客さんが入店されます。すると、集中力が途切れてしまい、なかなか自分が納得した作品にたどり着けなくなってしまって。「一つ一つ、気合を入れて集中して作りたい」――、その一方で、「せっかく来店してくださったお客様に対しても、きちんと向き合ってお話を聞きたい」という思いもありました。そこで、営業時間を固定せずに、状況に応じて日ごとに変えることで、開けている時間は接客の時間、制作の時間はお店を閉めるというように、分けることにしました。
結果として、ストレスを感じる機会は緩和されましたね。短い時間だったとしても、接客に特化してお店を開けている時間ですから、きちんとお客様とお話ができます。新しいお客様との出会いにつながる機会でもあるので、たった1時間でも開けたいと思っています。

充実感があれば
時間が細切れになってもいい

(就寝の)睡眠とは別に、仕事中に小分けに睡眠をとるようにしています。分眠ですね。子どもが2人いるので、仕事に加え、家事もしなくてはいけません。さらに、仕入れは早朝です。車いっぱいにお花を仕入れて戻ってくるので、それを降ろす体力がないときなどは、軽く睡眠をとって、ワンクッション置いてから荷物を降ろすようにしています。たった15分寝るだけでも、とてもパフォーマンス力が上がるのを実感するので、少しでも休めるときは、休むようにしています。
また、食事に関しても、特に時間は決まっていません。食べられるときに、という感じです。ランチの時間もバラバラだし、どれくらいの時間をランチに充てられるかも、その日次第。「気分を変えたいな」って思ったときは、カフェに行ったりすればいい。生活や仕事に対して充実感を感じているので、私自身、そういった時間の使い方に対して、何かストレスを覚えたりすることはありませんね。

直接会うための
“豊かな時間”としての実店舗

スケジュールがバラバラで、時間の使い方も細切れなので、お店を構えなくても成立する仕事のスタイルなのかもしれませんが、実店舗はあったほうがいいと思っています。お客様が持っている空気感やイメージって、直接話すことでしか見えてこないものが多分にあるんですね。話しながら、聞きながら、お客様の人となりが見えてくるので、「こういうようなお花にしませんか?」といったことが提示しやすいんです。実際にオーダー品を見ていただいたときに、すごく喜んでいただけると、ライブ感というか、お客様と時間を共有できた感覚があって、とても嬉しいんです。すべてのやり取りをWebだけで完結してしまうと、この感動は味わえないので、店舗は私個人の感覚や手ごたえを確認する装置としても、必要だと思っています。

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