育てるデジタル、信じるアナログ。 育てるデジタル、信じるアナログ。

研究の出発点

2020年からの数年間のコロナ禍で、ソーシャルディスタンスや非接触が推奨され、私たちの生活のデジタル化は一気に加速しました。以前では考えにくかった授業や飲み会までオンライン化が受け入れられ、ビデオ通話サービスの利用率は大幅に増加し、定着しつつあります。

ビデオ通話利用は
2020年に大幅に増加

ビデオ通話サービスを利用している

出典:博報堂生活総合研究所「生活定点」調査

一方で、人々が日常を取り戻すなかで、アナログな行動への回帰もみられます。大きく落ち込んでいた新年会への参加率は、2024年には大きく回復しました。

2023年以降、徐々に
通常の生活に戻る中で
一度失った
アナログ行動を取り戻す動きも

1年以内に新年会をした

出典:博報堂生活総合研究所「生活定点」調査

デジタル化の加速と、アナログ回帰。2つの動きが交差する今、これからの生活はどうなっていくのでしょうか? デジタルはさらに加速するのか? それとも、アナログ回帰が進むのか?
私たちは、この問いを「どちらか一方を選ぶ」という視点ではなく、生活者の視点から見つめ直しました。 生活者自身が、日々の生活を通して見出し、行動に移している、デジタルとアナログ、両方の「新しい価値」とは何だろうか?この問いの探求こそが、本研究の出発点です。

生活者とデジタル・アナログの今

デジタルは、もはや私たちの生活に溶け込み、空気のような存在になりました。しかし、生活者の声に耳を澄ますと、単なる「効率化のツール」としてだけではない、新たな関係性が見えてきます。

デジタルがきっかけとなり、リアルな世界への扉を開く。デジタルが、自分と向き合う内省の時間をくれる。デジタルを通じて、社会とつながりを実感する。調査・分析を進めるうち、生活者がデジタルの力を借りて、自らの世界を広げ、深めている、そんな様々な「兆し」が見えてきたのです。

一方で、デジタルが当たり前になったからこそ、アナログな体験の価値を再発見し、意識的に生活に取り入れる動きも顕著になっています。

それは、単に昔に戻りたいというノスタルジーではないようです。手間をかけること、不便であること、そして有限であること。そこに、今の時代だからこその豊かさや、自分自身を取り戻すための大切な時間を見出しているのです。

これらの声は、生活者がデジタル社会と自分なりにバランスを取ろうとする、静かな、しかし確かな兆しです。

  • 出不精な自分が
    ゲームきっかけで
    刀剣巡りの旅に没頭

    (40代 女性)
  • デジタルでなんでも
    保存できる時代に、
    枯れていく
    お花というものに
    魅力を感じるように
    なった

    (20代 女性)
  • 読書感想アプリで
    心の整理が
    できるようになった

    (50代 女性)
  • 息子のセルフカットを
    手伝うことで、
    親子で過ごす
    アナログな時間を
    意図的に増やしている

    (30代 男性)
  • 社会貢献アプリを
    始めたことで
    自分の行動と
    環境保護のつながりを
    実感している

    (30代 男性)
  • 完成品の猫の家を
    買うのではなく
    自分でつくるように
    なった

    (30代 男性)
  • パーソナルカラー
    診断アプリで
    買えなかった化粧品に
    チャレンジできた

    (20代 女性)
  • デジタル社会と
    バランスをとるために
    厄神様のお札に
    手を合わせ、
    自分を省みている

    (60代 男性)
出典:「生活図鑑」のための写真調査より