–日経クロストレンド(68)連載–
「43.2歳からおばさん」が調査で判明 激変する令和の「おば」像
「日経クロストレンド」の連載記事です。
何歳からおばさん? 博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」の調査で判明した「おばさん年齢」。実は、最新の2024年と10年前の調査で変化がなく「43.2歳」となった。だが、イメージを問うと、その中身が驚くほど変わっていた……。本連載で継続的に掲載している“40代おじさん分析”に続き、“おばさん分析”の第1弾。衝撃の調査結果を同研究所の当事者ともいえる45歳女性研究員が、自身の抱えるモヤモヤとともに解説していく。

おじさん研究に続き、今回はおばさん研究の第1弾(画像/KatoSaori/stock.adobe.com)
10年前から変わらぬ「おばさん」年齢
いきなり年齢の話で恐縮ですが、皆さんは「おばさん」と聞いて何歳くらいの女性を思い浮かべますか?
博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」では、「『おばさん』とは何歳からをさすと思いますか」という質問を聞いているのですが、最新の2024年の回答の平均値は43.2歳。そして10年前の14年調査でも全く同じ43.2歳でした。
世の中はこんなにも目まぐるしく変わっているのに、生活者が考える「おばさん」年齢は10年前から時が止まったかのようです。
筆者は現在45歳。世の中的には立派な「おばさん」です。しかし、自らを「おばさん」と呼んだり、周囲から「おばさん」認定されたりすると、なんだかモヤモヤするのです。「おばさん」というラベルがどうもしっくりこない。自分に合わない洋服を無理やり着せられているような違和感があるのです。そう感じる同年代の女性読者も多いのではないでしょうか。
「おばさん」年齢は昔から変わらずとも、「おばさん」像は変化しているのではないか? 40・50代女性の実態の変化に「おばさん」というラベルがフィットしなくなっているからかもしれない。
この違和感の正体や疑問を解明すべく、「おばさん研究」、略して「おば研究」(※)を始めることにしました。この研究を通じて、令和の「おばさん」像を明らかにするとともに、社会やマーケティングにおける彼女たちの新たなポテンシャルを発掘していきたいと考えています。
※私たちは、40・50代女性への親しみと愛情を込めて彼女たちを「おば」と表現しています。
昔の「おば」像vs令和の「おば」像
「おば」研究の第1弾として、生活者が抱く過去と現在の40・50代女性のイメージを把握するために、3都市圏(首都圏、名古屋圏、阪神圏)の20~69歳男女1500人に対して調査を実施しました。そこから見えてきたのは、筆者の想像を超えた「おば」像の変化でした。
●過去から劇的なアップデートを遂げていた「おば」像
百聞は一見にしかず。まずは結果をご覧いただきたいと思います。
「あなたが『40・50代女性』と聞いて思い浮かべるイメージはどういったものですか」という質問で、過去(10年以上前)と現在について、それぞれ想起することの自由回答を集計して上位6位までをまとめています(図1)。

博報堂生活総合研究所「40・50代女性のイメージ」調査
同じ年代の女性についての回答とは思えないほど、過去と現在で真逆のイメージワードが並んでいます。では、それぞれ具体的に見ていきましょう。
●かつての「おば」像は「昭和的なステレオタイプのお母さん」
まず、過去(10年以上前)の40・50代女性のイメージでは、性別や年代を問わず想起されるイメージが特定のステレオタイプに収束しており、かつての40・50代女性がいかに限定的な枠組みの中で認識されていたかが浮き彫りとなりました。
1位「おばさん(233件)」
最も多く登場したのは「おばさん」というラベルそのものです。「theおばさん」「おばちゃん」「おばさんパーマにエプロン姿」「オバタリアン(※昭和の流行語)」といったもので、40・50代女性と「おばさん」というラベルのひも付けが強固なものであったことがうかがえます。
2位「専業主婦・家庭中心(123件)」
2位は社会的役割についてで、「家庭に入っている」「自分より家族を優先」「良き母」「エプロン姿」といった意見が集まりました。30年前は共働き世帯より専業主婦世帯のほうが多く、40・50代女性には「家庭を守る母親」というイメージが付いてまわっていたのでしょう。
3位「老けている・疲労感(119件)」
3位は「所帯じみている」「見た目が実年齢より老けている」「疲れが隠し切れない」という回答で、長年の家事育児で蓄積した疲れが加齢とともに表面化している。そんなイメージでしょうか。
4位「地味・身なりに無頓着(68件)」、5位「太め・パーマ(63件)」
4位、5位は外見的イメージ。「おしゃれをせず地味」「化粧っ気がない(逆に厚化粧)」「美容にお金をかけない」「中年太り」「おばさんパーマ(くるくるの細かいパーマ)」などでした。
かつての40・50代女性たちが皆このような風貌ではなかったと思いますが、昭和のアニメに登場する「お母さん」キャラをはじめ、当時はこのような描かれ方をされることが多く、固定化されたイメージが醸成されていたのかもしれません。
6位「図々しい・うるさい(53件)」
最後は内面的な要素で、「図々(ずうずう)しい・うるさい」というもの。「井戸端会議ばかりしている」「デリカシーがない」「がめつい」「声が大きい」などの意見が並びました。
かつての「おば」像は、「母として家庭を守る」という役割を全うし、外見や行動面については周囲の目を気にしない。「昭和的なステレオタイプのお母さん」という感じでしょうか。「おばさん」という言葉そのものが最頻出であることから、「おばさん」というラベルは、かつての「おば」像といまだ強く結び付いていることが分かります。
どうやら冒頭で述べた“自分を「おばさん」ラベルにひも付けることの違和感”は、ここに起因していそうです。
●令和の「おば」像は「活・働・美」
続いて令和の「おば」像を見ていきましょう。過去のイメージから一転して「おばさん」の登場頻度は激減し、代わりに「若々しい」「働いている」「美しい」「活動的」など年齢にとらわれないイメージがあふれていました。
1位「若々しい・年齢不詳(172件)」
1位は「見た目が実年齢以上に若い」「昔より若い」「気持ちが若く、新しいことにも挑戦している」「アクティブ」という外見・内面ともに以前よりも若く活動的になっているという意見で、性別・年代問わず非常に多く見られました。
2位「働いている・社会進出(95件)」
2位は「キャリアウーマン」「共働きが当たり前に」「子育てしながら社会でも活躍」など、女性の社会進出に関する回答が多く寄せられました。特に20・30代の若年層から「バリキャリ」「管理職」といったイメージが多く挙がっており、若年層の人たちにとって40・50代女性は「母親」的イメージよりも職場の「先輩や上司」という存在として映っているようです。
これは、男女雇用機会均等法以降の世代が管理職適齢期を迎えているほか、女性活躍推進法などの政策が結実しつつある現状を反映しているのかもしれません。

3位「綺麗(きれい)・美意識が高い(83件)」、5位「おしゃれ(42件)」
3位と5位は外見的な要素で「美容に気を使っている」「スタイルが良い」「小綺麗」「おしゃれ」などでした。特に30代女性で「きれいなママ」「働きながらきれい」など、仕事も育児も美しさもと、「両立」ならぬ「三立」させるマルチタスクなイメージが多く見られました。これは未来の「おば」たちである30代女性にとって「こうなりたい」という理想なのか、「こうせねば」という義務感なのか……というのが気になるところです。
4位「元気・アクティブ(59件)」、6位「自由・自立(37件)」
4位と6位はライフスタイル周りで、「活動的」「ハツラツとしている」「自分の時間を楽しんでいそう」「経済的に自立している」という意見や「推し活」というワードも挙がっています。
特に50代女性で「自分の好きなことをやっている」「趣味がある」「自分自身を楽しんでいる」といった回答が多く、かつての「家族のための献身」という規範が薄れて、自分自身の人生を謳歌する「個」としての確立が進んでいることを示していそうです。
令和の「おば」像は、「家庭という枠を超えて仕事、子育て、自分磨き、趣味活動といったマルチタスクをこなすアクティブな女性」といえそうです。
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<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
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