博報堂生活総合研究所 みらい博2025 働き直し 仕事が変わる。日本が変わる。

「人が企業を選ぶ」社会の
新しい働き方とは

石橋孝宜(いしばし・たかのり)

株式会社タイミー 執行役員 スポットワーク研究所 所長

働き方が多様化した時代の
仕事の見つけ方

タイミーは代表の小川嶺が21歳のときに立ち上げました。コンビニで働いていたときにオーナーからとても感謝され、自分の時間には大きな価値があることを実感した経験が原体験となって います。働き手の「働きたい時間」と、企業側の「働いてほしい時間」をマッチングするサービスを行い、報酬は即日入金されます。現在、約900万人(2024年9月時点)が登録しています。
労働市場が慢性的な人手不足である今、「企業が人を選ぶ」から 「人が企業を選ぶ」社会となってきています。働き方も多様化し、企業に属さずに単発で仕事を請け負う「ギグワーク」や、企業と雇 用契約を結んだギグワークである「スポットワーク」などが注目されています。
スポットワークではスキルが身につかないと一部でいわれていますが、スポットワークならお試しでいろいろな仕事をしてみて、 そこで得たフィードバックから、それが自分に合う職種かどうか確認できる。そうやって自分に向いた職業を見つけていくのは面接や業界研究だけではわからないことですし、かくあるべき仕事の探し方ではないでしょうか。
主婦や学生、退職後のシニア層のほか、会社員として働きながら副業している方もいます。転職を見据えていろんな業界を見てみたい方や、ビジネス上のお客様のところで働いて何かを得ようとしている方など、副業の動機はさまざまです。
2023年に実施した「副業に関する実態調査」によると、副業をする動機は「本業ではできない仕事ができる」という人が33%。「いろいろな職場で働ける」という人が48%。息抜きとして副業している人たちも一定数います。
「息抜き」というのは、「やってみたい仕事をちょっと試してみたい」という気持ちかもしれませんね。

働く側と受け入れる側、
それぞれの「新しい働き方」

「高い離職率」の大きな原因は企業と働き手(ワーカー)のミスマッチです。それを防ぎ、かつワーカーのキャリアを可視化するため、タイミーには「バッジ機能」があります。働いたあと、企業からの評価に加え、期待以上の働きをした業務が認定された人にはバッジが付与されます。バッジを持っている人には他企業も注目しますし、何より本人が手ごたえを感じられる。就業先から声をかけられ社員となる人など、長期就労につながるケースも。
このように、スポットワークでも評価を目に見えるかたちとし、 複線化することは可能です。会社に属して働くのが必ずしも安定しているわけではない現在、様々な場所で働いて評価を積み重ねることは今後、キャリア形成のひとつの在り方となるでしょう。
人口と仕事数は比例するので、タイミーの利用状況は都市部中心ではあります。ですが地方には伸びしろがあり、先日は屋久島でマッチングしました。全国でまんべんなくマッチングがなされており、自治体との連携協定をはじめ、地方の労働力不足解消にも貢献しています。
地元に仕事がないと考えて東京に出てくる人は多いですが、仕事がないことはありません。ただし地方の中小企業は、人手不足と言いつつも“何でもできる人”を要求する傾向があります。その考えを変えていく必要があります。多彩な仕事内容をひとりの人に任せるのではなく、細切れにして何人もの人に割り振るという 考え方を、人手不足で困っている中小企業にこそ受け入れてほしいです。

求めているのは「手ごたえ」の
感覚から広がる自分の可能性

先日、働き方というテーマで高校で講演をしました。講演前は働くことに対してネガティブな印象を抱いていた学生たちですが、 タイミーの説明を聞いたのち「働くのって楽しそう」「面白そう」 といった感想をくれました。「お試しで働く」ことでいろいろな職業を体験できて、自分の可能性を広げていける。自分には選択 肢がたくさんあると感じたことで、仕事へのイメージがネガティブなものからポジティブなものに変わったのでしょう。
それでは人は何のために働くのでしょうか。やりがいや働きがいは長期スパンでないとなかなか感じられませんが、「手ごたえ」 は日々の中で実感として感じ取れます。自分が何かの役に立っている感覚。「この仕事はひょっとして自分に向いているのかもしれない」と思えること。そういうことに人々は今、価値を感じるようになっています。タイミーでのスポットワークは労働の報酬がすぐに払われ、仕事先からの評価(フィードバック)も必ずき ます。そこにある種の「手ごたえ」というか、自分が何かを積み上げていると感じられるようになっています。
ワーカーのみなさんが働き先から言われて嬉しい感想は「ありがとう」だそうです。人から感謝されると、自分の存在意義や有用・ 有能感を味わえます。これもまた「手ごたえ」ですね。

石橋孝宜(いしばし・たかのり)

株式会社タイミー 執行役員 スポットワーク研究所 所長

コンサル、ウェディング、飲食会社での現場・人事・事業経営者を経てタイミーにジョイン。コーポレート本部長、タイミー事業部長を経て現在執行役員・スポットワーク研究所所長。

石橋孝宜(いしばし・たかのり)

株式会社タイミー 執行役員 スポットワーク研究所 所長

コンサル、ウェディング、飲食会社での現場・人事・事業経営者を経てタイミーにジョイン。コーポレート本部長、タイミー事業部長を経て現在執行役員・スポットワーク研究所所長。

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