「場所がない」は思い込み? 生活者の驚きの空間活用術3選
研究員の松井が気になるテーマについて執筆します。
私が所属している博報堂生活総合研究所では、衣・食・住などのテーマに合わせ生活者が撮影した写真データを自由に閲覧・検索ができる「生活図鑑」というサイトにまとめています。
これまでの「食」「衣」に続き、リビング、子ども部屋、在宅ワークスペース、パーソナルスペース、住まいのひと工夫、住まいの課題という6種類の写真を収録している「住」のデータを取り上げたいと思います。
写真からは、家を建てるなら取り入れたいと思う様々な住空間の知恵や工夫がみられましたが、そんな機会はそうあるものではありません。
そこで今回は、既にある住空間を活かした事例を、3つの活用術としてご紹介したいと思います。
1.別用途に見立て術
リモートワークができるようになっても場所がない。子どもが育ってきて、部屋が足りない。でも気軽に引っ越したり、家具を増やしたりできない……。まずひとつ目は、そんな悩みに対しての工夫をみてみましょう。
これらの写真をみて、出窓・押し入れと平らな板があれば、どこでもデスクになるというところに驚きました。ロフトのように高いベッド下の空間をデスクにするシステムベッドの写真もたくさんありましたが、既にある板を利用する着眼点がすばらしいと思います。コメントを読むと、押し入れデスクは扉を閉めるとすぐ隠せる、という別のメリットも生まれているようです。
また、押し入れの活用術として、こんな事例もありました。
押し入れの扉を外して、小部屋感覚で座ったりくつろいだりする空間にしています。子どもには小さくても自分の居場所があるのが、秘密基地のようでかえって楽しいのかもしれません。写真のようにラグやクッションなどの置く物を工夫すると、最近「ヌック」として注目されているこぢんまりとした居場所に仕立てることもできそうです。
2.何でも掛け置き術
ふたつ目は、限られた空間の活用術として比較的定番な「掛ける」について。キッチンでの調理器具や浴室の洗面用具などもみられましたが、こんなものも掛けられる! という意外なものをご紹介します。
テレビを壁掛けにしている写真は他にもありましたが、扉につけるものとしては大型のものではないかと思い、この事例を取り上げました。傘、テレビ、楽器など、壁や扉に掛けられるのは小さくて軽いものだけではないという視点、さらに掛けっぱなしの部屋の装飾でなく日常で使うものも掛けられるという視点で、空間の使い方が変わってくると感じます。
3.便利に動かし術
最後は、家具を動かせるようにしている事例です。家具はだいたい「決まった場所」に置いていることが多く、模様替えで配置を変えることがあるかどうかではないでしょうか。対して、日々動かせるようにして、使いたいときに便利に使える工夫を収めた写真を集めてみました。
1枚目と2枚目のゴミ箱やテレビは、比較的小さなものなので移動式にしやすいのだと思いますが、3枚目のカーテンで部屋を仕切ったり、広くしたりすることで、壁の役割を動かせるようにする発想は面白いと感じました。4枚目は、必要な時に勉強机にして、不要な時はたためる棚と椅子です。もっと空間をつくるために、完全に折りたたみ机にしてしまうこともできますが、かえって出すのが面倒で使わなくなってしまうこともあります。毎日使う勉強机という特性だと、こうした使い方の方が最適なのかもしれません。どれくらい可変性のある家具にするのか、使う頻度や用途も考えながら選ぶ必要がありそうです。
今回は、生活者のリアルな住居写真から3つの空間活用術をみてきました。すべての工夫に共通するのが「思い込み」からの脱却です。「この空間はこの行動をするための場所だ」「この家具はここにしか置けない」など部屋や家具を固定的に捉えない、柔軟な発想が住まいの課題解決につながるかもしれませんし、住空間に限らず思考を広げてくれるきっかけにもなりそうです。
【調査概要】
■写真調査「住」
調査対象 20~69歳の男女322名
調査方法 インターネット調査(全国)
調査時期 2023年2月
【関連サイト】
住|生活図鑑|ひらけ、みらい。生活総研
【Yahoo!ニュース エキスパートより転載】
https://news.yahoo.co.jp/expert




