Researchers’ View
博報堂でマーケティング領域を担当している若手3名が、ここまでの「感情ミュート社会」では扱いきれなかった視点から感情について考えました。感情というテーマへの視野を広げる視点として、6つの問いでお届けします。
人を動かすのは
「心」か「仕組み」か?
ふしぎな魅力で人を動かしてしまう「人たらし」。かつては個人の資質や道徳心といった内面に頼って心を動かそうとしていたが、今は「仕組み」がそれを担う時代だ。例えば、「水を大切に」と良心に訴えかけるより、勝手に水量を絞るシャワーヘッドの方が確実だ。カリスマ店員の接客術も、今やデータで解析され、再現可能な技術として共有されている。心への働きかけすらも、環境やシステムによってデザインされるものになっているようだ。不確かなやる気や精神論に期待し、裏切られて消耗するのは得策ではない。目指すべきは、人が我慢せずとも自然と動いてしまうこと。そんな「人を誘導する仕組み」をデザインする視点こそが、現代における「人たらし」の正体なのかもしれない。
感動のパッケージ化は、
心を貧しくするか?
涙を流すためだけに集まる「涙活」が盛況らしい。ストレス解消の手段として「泣く」という行為を効率よくパッケージ化し、消費しにいく姿はいかにも現代的だ。確実に泣けると保証されたコンテンツは、約束された感動として絶対的な安心感を与えてくれる。だが本来、感情とは予期せず訪れるものであり、そのわからなさを抱えたまま、他者と確かめあうプロセスにこそ意味があるはずだ。「泣く」という結果だけを目的化し、用意された感動ばかりを求めていると、どうなるか。私たちは予期せぬ感情への耐性を失い、「わかりやすい刺激」以外には心が動かない身体になっていく可能性がある。「わかりやすさ」への傾倒は、感情の幅を狭め、「わからなさ」からはじまる豊かなコミュニケーションを、私たちから奪ってしまうのではないか。
ほか4つの問いは下記の記事からご覧いただけます。
→Researchers’ View 感情を問う6つの視点 –1–
・ 感情の「言語化」は、絶対的な正なのか?
・ 他者の感情への「共感力」は高め続けるべきか?
→Researchers’ View 感情を問う6つの視点 –3–
・ 現代の子どもたちは、感情の種類が少ないのか?
・ 本音をさらけ出すのは良いこと?

