–日経クロストレンド(71)連載–
人の「幸せ」を写真でのぞき見
家族ありでも“ひとり”の隙間探す
「日経クロストレンド」の連載記事です。
令和時代の「幸せ」とは何か――。博報堂生活総合研究所は、生活者自身が撮影した写真を収集・分析する「生活写真調査」を実施。今回は<幸福>をテーマにまとめた1067枚の写真から、4つの「幸せ」のスタイルを同研究所の研究員が解説する。背景にある生活者の隠れた渇望やそこから見えるビジネスチャンスを探った。

生活者の“生写真”から「幸せ」になる瞬間や出来事を分析。そこからは、隠されたインサイトと新たなビジネスチャンスが見えてきた(画像/tonktiti/stock.adobe.com)
博報堂生活総合研究所は、「生活者をまるごと見る」という基本スタンスで、生活者研究を行っています。その研究の一つに、生活者自身が撮影した写真を収集・分析する「生活写真調査」があります。
ここで収集した写真をデータベースとしてまとめたサイト「生活図鑑」では、これまでの衣食住など、具体的なテーマに続き、初の<幸福/信頼>という抽象的なテーマを2026年に公開しました。今回は、「生活図鑑」の<幸福>テーマに収録されている1067枚の写真から、写真だからこそ見えてくる今の時代の「幸せ」のスタイルを4つ解説します。
幸せは「上」にあり
家の中や外で感じる幸福をテーマとして写真を収集しましたが、モノ、場所、人、場面など様々な風景が写し出されました。そんななかで、面白いと感じたのが「上」を写した写真でした。
気持ちの良い青空や、虹がかかる希少な空模様を幸福として選ぶのはよく分かりますが、家の天井の写真が挙げられたのが特に印象的です(写真1)。
空であれ、天井であれ、「ふとした瞬間」や「寝転がったとき」などの何げないタイミングの、目の前や足元だけでなく「上を見ることができる」心の余裕のようなものが、暗に含まれているのではないかと推察できます。
ビジネスにおいても、生活者へ幸福を感じてもらったり、醸成したりするときには、「上」がキーポイントになるかもしれません。
例えば、住居やホテル、店舗の天井に「アート」や「メッセージ」を付加し、幸せを感じる空間として設計したり、スマホから離れて「上を向いて自分と向き合う時間」をつくる習慣提案をしたり――。「視線を上げること=幸福感をかみしめる心の余白を提供すること」と捉えた商品開発やサービス設計という、新しい視点につながるのではないでしょうか。
また、空の写真のなかで多く出現したのが、夕日・夕焼けの風景でした(写真2)。美しさはもちろんですが、オレンジ色の温かみ、無事に一日が終わる充実感や安心感が表れているようです。
なかには「どこか寂しげだが、多幸感に満ちあふれた風景よりも私は好き(52歳女性)」「母が亡くなり葬儀を終えた数日後に撮ったものです。あまりにも美しく輝く夕焼け雲は母が見守ってくれているのかもしれない、と優しい気持ちになりました(44歳女性)」というコメントもありました。
「切なさや寂しさも含んだ幸せ」という、非常に複雑な感情や感覚も写真によって表現されているようで、その生活者の繊細な感受性に感心します。ここから見えてくるのは、「終わりのもの悲しさ」と「リセットの安心感」という幸せにつながる情緒価値です。
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<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
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