2026.04.23

16カ国・地域出身の学生が、
“生活者発想”で別府の社会課題解決に挑む

「The H magazine」の転載記事です。

博報堂における生活者研究のシンクタンクである博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)は、国際的な学生が多く在籍し、グローバルリーダーの育成をミッションとする立命館アジア太平洋大学(以下、APU)と連携し、博報堂のフィロソフィーである「生活者発想」をベースとした英語での実践型ワークショップを、2025年10月(オンライン)および11月(対面)に実施しました。
本プログラムは、アジアを中心とした海外の若者層、将来のグローバルリーダーに向けて、博報堂が大切にしてきた「生活者発想」と、それに基づくマーケティングを体験的に学ぶ機会として企画されたものです。あわせて、博報堂および「生活者発想」の認知向上を目的としています。 2回のセッションを通じて、APUに在籍する16カ国・地域出身、学部1回生から大学院1回生までの学生、計40名が参加しました。
本レポートでは、プログラムの狙いと構成、ならびにワークショップ当日の様子をご紹介します。

1.プログラム概要:教室の中だけでは学べない、「人のこころを動かす」ための実践的なマーケティング

生活者発想を起点に、「人のこころを動かす『良い問い』」を見つける

AIが効率的な「答え」を提示することが当たり前になりつつある時代において、人間には「新たな創造や問題解決につながる良い問い」を見出す力が、これまで以上に求められています。博報堂のフィロソフィーの一つである「生活者発想」は、良い問いを生み出すための起点になる考えでもあります。

本プログラムでは、オンラインと対面の2セッションを通じて、単なる知識のインプットにとどまらず、具体的な社会課題を題材にプラニングを行うProject Based Learning(PBL)形式でワークショップを実施しました。参加学生は、博報堂独自の「生活者発想」およびプラニングメソッドを実践的に体験しながら、社会や生活者を深く洞察し、課題解決のアイデアを創発するマーケティングの醍醐味を学びました。
講師は、生活総研上席研究員の伊藤祐子、ならびに Hakuhodo International Thailand Insight & Strategy Director の Prompohn Supataravanich 氏が担当。
両名は、博報堂生活総研アセアン(HILL ASEAN)に2025年まで在籍し、長年タイを拠点にアセアン各国の生活者研究およびプラニング業務に従事。クライアント、学生、社内向けに多数のマーケティング研修・ワークショップを実施してきました。

2.プログラム詳細:生活者発想で、社会課題のテーマに挑戦

① プラニングの起点となる「生活者発想」

本セッションでは、博報堂のフィロソフィーの一つである「生活者発想」について、WHAT(定義・背景)、WHY(なぜ重要なのか)、HOW(どのように発想するのか)の3つの視点から解説。これらは、国内外の博報堂社員に対しても、日本語および各国言語で実施している研修内容です。

セッション内では、生活総研が30年以上にわたり継続している生活者調査「生活定点」や、博報堂生活総研アセアン(HILL ASEAN)による生活者調査データを活用。調査データをもとに、時系列変化の背景仮説や国別比較から見える生活者の特徴について考えるミニワークを行い、参加者同士で意見交換を行いました。

② AI時代に求められる、「良い問い」の立て方

「成功するリーダーは優れた質問家である」「イノベーションは一つの良い質問から始まる」とも言われています。本セッションでは、「問題を機会に変える」「隠れた価値や資源を発見する」といった実践的なヒントを紹介しながら、「日本の猛暑」「インバウンド」などの社会課題を題材に、人々の行動を促す「良い問い」を構築するアプローチを学びました。

③ グローバル生活者インサイトの共有

生活者研究がどのようにビジネスにつながるのかを学ぶために、HILL ASEANによる調査・分析に基づいた「Emerging Affluent in ASEAN(アセアン新興富裕層)」の研究に関する講義も行いました。アセアン新興富裕層は、今後のアジア市場を牽引する重要なセグメントであり、参加学生にとって、グローバルビジネスの最前線で求められる生活者インサイトやマーケティング提言に触れる機会となりました。

④ 別府を舞台にした、リアルな社会課題への挑戦

グループワークのテーマは、APUの所在地でもある「別府」。「外国人観光客と別府住民がwin-winの関係を築けるビジネスアイデア創出」という、現実に直面している地域課題を題材としました。

生活総研が重視する「生活者を丸ごと観察する」エスノグラフィー的アプローチに基づき、参加学生は事前課題として別府市内でのフィールドワークを実施。自分の目と手と足を使い、地元住民と観光客の双方の視点から、文化的ギャップや地域の強み・弱みを発見・分析しました。

ワークショップ当日は、グループごとに事前課題を共有し、生活者インサイトの深掘りやアイデア創発に取り組みました。多様なバックグラウンドを持つ学生たちは、立場の異なる生活者双方を踏まえた最適解を見出す難しさに直面しながらも、積極的に意見を交わし、協働してアイデアをまとめていきました。

プレゼンテーションでは、各チームが考案したアイデアを発表し、講師陣による質疑応答やフィードバックが行われました。発表方法も多様で、サービス提供者になりきった説明や、イラストを用いた表現など、「相手に分かりやすく、楽しく伝える」という姿勢が随所に見られました。

学生からは、AIを活用して生活者に寄り添う提案が多く見られ、生活者データの行政活用や、AIによる観光体験プラニング、観光客と地元住民をつなぐマッチングのアイデアなどが発表されました。
審査員として参加した生活総研 所長・帆刈吾郎氏からは、「別府の既存の資産やブランドを強化するか、刷新するかという大きな分岐点がある中で、どのアイデアもAPUで学ぶ皆さんならではの視点で生活者を捉えており、納得感の高い提案だった」との講評がありました。

3.参加者からの声(受講後アンケートより一部紹介)

“From a perspective of a student who is doing shuukatsu, understanding the background of a company gives inspiration and helps think critically in our daily lives.”
(就職活動をしている学生の立場からすると、企業の背景を知ることで新しい気づきや刺激をもらえますし、日常生活の中でも物事をより深く、考えて捉えるきっかけになると感じました。)

“Diverse perspectives, team creation and development.”
(多様な視点やチームづくり、チームの成長について学べた。)

It was very mentally stimulating, and I loved getting new insights!!!”
(とても頭を使う内容で、新しい気づきを得られて良かったです!)

参加学生の国籍(参加人数順)
インドネシア、ベトナム、タイ、インド、ミャンマー、バングラデシュ、日本、パキスタン、ガーナ、フィジー、中国、モロッコ、マダガスカル、フランス、エチオピア、エジプト

4.今後の展望:未来を共創するパートナーシップの拡大へ

本プログラムは今後、インターナショナルプログラムを提供する国内大学との連携、ならびにクライアント企業や地域事業との協業を通じて、さらなる展開を検討していく予定です。

グローバル学生の育成、生活者発想を元にしたプラニング、博報堂の研究員やプラナーによる英語でのワークショップや研修にご関心のある大学・企業の皆さまは、ぜひ生活総研までお問い合わせください。

 

立命館アジア太平洋大

2000年に「自由・平和・ヒューマニティ」、「国際相互理解」、「アジア太平洋の未来創造」を基本理念に掲げ、大分県別府市に開学した私立大学。118ヵ国・地域(2025年11月1日時点)出身の外国人留学生 が学生の半数を占め、THE日本大学ランキング2025では「国際性」全国2位、「教育充実度」全国3位の 評価を受けています。多文化多国籍環境のもとで、協働学習や日英2言語での教育を提供し、グローバル教育をけん引しています。

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