2024.10.15

–日経クロストレンド(54)連載–

Z世代の親との関係性が30年で激変 「メンター・ママ」って何?

執筆者:生活総研 研究員 タカハシ マコト

こちらは日経クロストレンドからの転載記事です。

尊敬しているのは父か母か、二人で一緒に出かけるなら父か母か――。博報堂生活総合研究所が2024年と1994年の生活者調査を比較したところ、若者の親との関係性に大きな変化が起きていることが分かった。浮かび上がってきたのが、令和時代の新たな親子関係。同研究所の上席研究員が解説する。

若者論はいつの時代も注目を集めるテーマであり、Z世代を巡る言説も数多く飛び交っています。ですが、定性調査や単発の定量調査だけでは、表面的な特徴しか捉えられない可能性もあります。

博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)は、定量的な時系列調査を実施・分析することで、そうした現状に一石を投じることを試みました。

その調査結果において、大きな変化が見られたのは「人間関係」。人との関係に光を当ててみると、Z世代の本質が周囲と地続きに浮かび上がってきました。

今回は、私たちが発見したZ世代の特徴的な人間関係の中でも、特に「母親」との関係にフォーカスして見ていきます。

「尊敬している親」で母が父を逆転

私たち生活総研は、2024年1~2月にかけて19~22歳の未婚男女600人を対象とした「若者調査」を実施しました。対象者は02~05年生まれで、世代でみるとZ世代(1990年代半ばから2010年代初頭生まれ)の真ん中あたりに位置します。

生活総研では、1994年1月にも当時19~22歳だった団塊ジュニア世代1000人を対象にして同じ調査手法、調査項目での調査を実施しています。今回の調査と94年調査のデータを比較することで、ちょうど30年たった若者の意識や行動における変化を観察することが可能です。

今回、私たちが特に注目したのは、「尊敬している親」についてのデータです(図1)。

【図1】尊敬している親/価値観や考え方に一番影響を与えている相手

これは、「どちらを尊敬しているか」という単一回答ではありますが、94年の調査では「父親」を尊敬している若者が53.5%と過半数を占め、母親(45.5%)を上回っていました。

それに対し、2024年の調査では、「母親を尊敬している」と答えた人が61.5%まで大幅に増加。「父親」(37.0%)を逆転しました。

また、「自分の価値観や考え方に一番影響を与えている相手」を聞いたところ、「父親」という回答は30年前とほぼ変化がないのに対し、「母親」は約2倍に増加しています。

かつては、子育てを主に担い、家族との距離が近い母親は子どもにとって親近感はあるものの、「一家の大黒柱である父親が、尊敬という点では一歩リード」だったのかもしれません。しかし今や、Z世代の多くは父よりも母にリスペクトする気持ちを抱いているのです。

娘だけでなく息子も母と一緒に

尊敬に続いて、親しさや行動の近さも確認してみましょう。

「友達親子」という概念は1990年代後半から提唱されていましたが、母親と洋服やバッグを共有したり、友人のように仲良く買い物に出かけたりするのは、「息子ではなく母と同性である娘」という印象はないでしょうか。

「二人で一緒に出かけるなら父か母か」についての調査結果を男女別に見てみると、女性(娘)は、今も30年前も約9割が「母親と出かける派」で、大きな変化はありません(図2)。

【図2】二人で一緒に出かける相手/男女別(単数回答)

親しいだけでなく本気でぶつかる

Z世代とその母親をつなぐ関係は、敬意や親しさだけではないようです。「本気でけんかすることが一番多い相手」「一番リラックスして話ができる相手」「悩みごとを相談することが一番多い相手」のいずれにおいても、「母親」と答えた人は30年前から大きく増加しています。

特に、「本気でけんかする相手は母親が一番多い」と答えた人は、過半数を占めました(図3)。

若者たちに尊敬され、男女とも一緒に出かけるほど親しい母親は、その距離の近さゆえか最もぶつかる存在でもあり、いわゆる「けんかするほど仲が良い」ということわざを地でいくかたちになっています。

だからこそかもしれませんが、そんな母親から受ける助言については、「アドバイス通りに行動することが多い」という回答が、94年より大きく増えて7割に迫りました。

【図3】一番◯◯する相手/母親からのアドバイスや忠告

 

→続きは「日経クロストレンド」のページからご覧ください。

 

<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
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