私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

40代おじさんの生き様は「30点」?
精神科医による処方箋
–日経クロストレンド 連載⑩–

生活総研 上席研究員/コピーライター

前沢 裕文

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

「40代おじさん」の意識調査による悲しい結果を精神科医はどう分析するのか。博報堂生活総合研究所の前沢裕文氏(44歳)が、カウンセリングで救いを求めた回の後編(前編はこちら)。イライラすることが必ずしも悪いことではないと分かり、ほっとしたのもつかの間。突きつけられた「30点」という点数の真意は?

博報堂生活総合研究所の上席研究員・前沢裕文氏(左)が精神科医の木村好珠先生(右)にカウンセリングを依頼

前沢裕文(以下、前沢):
ちょっと聞くのが怖いのですが、この40代おじさんの意識調査の結果に精神科医として点数をつけると何点になりますか?

木村好珠(以下、木村)
今の40代おじさんは、30点か40点くらいじゃないですか(笑)。

前沢:低っ!(笑)。かなりまずいということじゃないですか……

木村:点ではないですから(笑)。何と言うか、もったいない。意識をほんの少し変えるだけで60~70点まではすぐに上がりますよ。

前沢:一番変える必要があるのはどのようなところでしょう?

木村:熱中していること、はまっていることがないのは、つくった方がいいです。何でもいいので。家で疎外されて、仕事に熱中してきたせいで友達とも距離ができて……という40代にとっては、趣味などのコミュニティーができるのはとてもいいことだと思います。

ちょっと重い話になってしまいますが、コロナ禍で女性の自殺が増えている原因の一つとして、気軽におしゃべりしたり、相談したりできなくなってしまい、“外の世界”がなくなってしまった、そういう場が奪われてしまったことは大きい。特に、専業主婦の方は家庭しかなくなってしまう。子育てしかなくなってしまう。

40代おじさんにとっても、家庭、仕事以外の“外の世界”を持つことは大切です。

前沢:40代おじさんが“外の世界”にあたるものをつくるためには、何にはまればいいんですかね? 「好きなものが分かりません」「好きなことが見つかりません」と言われませんか?

木村:年代にかかわらず、好きなものややりたいことが見つからないという相談を受けることは結構あります。最初に言うのは、「自分が楽しいと思う瞬間ってどういうときですか? これやってるとき楽しいなって思うことは絶対あったと思うんだけど、楽しいと思うときってどういうとき?」と聞くと返ってきます。やりたいことと聞くと返ってこないけれど、「楽しいときはいつ?」と聞くと返ってくる。それで返ってこない人はほとんどいないですね。

前沢:「寝てるときです」「食べてるとき」ですって返ってきたら……

木村:そうしたら、じゃあ、どの枕が寝心地がいいか調べてみましょうと言います。食べているときが楽しいと返してくれたら、例えば、どの唐揚げ粉が一番おいしいか調べて私に教えてくださいって。何でもいいんです。好きなものが多いということは、依存先が多い。つまり、情熱のぶつけ先が多いということ。依存先を増やすことが大事です。

前沢:こういうものにはまった方がいい、というのはないんですね。

木村:「◯◯でなきゃいけない」という固定観念は外してください。40代おじさんは仕事でもそうなのですが、ピラミッド型の組織に慣れているから、部下に対しても教える側でいなきゃいけない、自分ができなきゃいけないと思っている。「◯◯でなきゃいけない」「◯◯しなきゃいけない」みたいな固定観念に縛られがちです。mustなことなんて世の中にほとんどないし、mustだと決め付けているのは自分だという話をよくします。本当にmustなのかどうかは見極めた方がいいですね。

医者という職業も「威厳がある方がいい」と言われたり、私もテレビに出演する際には「専門家っぽく話してください」「強く言い切ってください」と求められることがありました。でも、それは無理。私はそうはできないから、例えば診察室の雰囲気を親しみやすく変えたり、話しやすいようにしようと。精神科だから話しやすいことは大切で、威厳がない方がむしろ話しやすいでしょうし。できないことを知ることで、できることがいっぱい見つかります。

前沢:それも固定観念の外し方の例ですね。

木村:そうやって自分を分析して、できないことを知って認めることは、30点を60~70点の意識に変えていく第一歩になると思います。

「こうしなきゃいけない」にとらわれるから30点になってしまうんですよ。しなきゃいけないという気持ちになっているということは、今の自分の気持ちとは違うわけじゃないですか。だから、そこに絶対に不満が生まれます。今は少しずつダイバーシティーが認められる時代になってきて、本来は自由になるはずなのに、自分が「こうしなきゃ」にこだわってしまう。本来、活力も情熱もあるんだから、そうとらわれてしまうのはもったいないですよ。

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

 

<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
第1回ーー  「43歳からおじさん」が調査で判明! 「7つの特徴」を大分析
第2回ーー 足りないのはお金より時間 40代おじさんの幸せは“時産”にあり
第3回ーー たこ焼きが1位? 和食が消えた? 好きな料理ランキング大激変
第4回ーシュフからシェフに! オンラインで「我が家の食卓」が変わる
第5回ーー 40代おじさん必読! J.Y. パーク氏に学ぶ 「褒めワード」ベスト5
第6回ーー 世代間ギャップを学べる魔法の質問 「お金持ちって誰ですか?」
第7回ーー 「お金持ちへの憧れ」は徐々に減る?若者はなりたい自分を投影
第8回ーー 40代おじさんに黄信号 「男女平等感」が世の中とズレている!?
第9回ーー 40代おじさんの意識を精神科医が分析 悲しい性をメッタ斬り!?

プロフィール

写真
木村 好珠(きむら このみ)先生

東邦大学医学部卒。慶応義塾大学病院にて研修後、精神神経科に進む。東北の病院で常勤医をした後、現在は、東京都内及び静岡のクリニックで勤務する傍ら、産業医、健康スポーツ医、スポーツメンタルアドバイザーとして活動。脳と心のコンディショニングをテーマとし、子供から大人まで幅広い世代のメンタルアドバイスを行っている(スポーツメンタルアドバイザー歴:東京パラリンピックブラインドサッカー日本代表、レアル・マドリード・ファンデーション・フットボールアカデミー、北海道コンサドーレ札幌アカデミー、横浜FCフットボールアカデミー、日本大学ラグビー部。その他、NowDo、コーチユナイテッドなどオンライン講義)

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