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2023.10.19

「若者の○○離れ」のウソ・ホント

現役大学生は30年前の「若者論」をどう読む “まさつ回避”は共通

執筆者:生活総研 研究員 加藤あおい

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

「若者の○○離れ」という議論の裏には、“若者が変わってきている”という前提の考え方があるはずだ。果たして、若者は本当に変わってきているのだろうか。それを探るために、今回は博報堂生活総合研究所の研究員が、約30年前の若者研究の報告書を現役大学生にぶつけ、どう感じるのかを徹底調査。今の若者が感じた、昔の若者との「同じところ・違うところ」とは。

若者研究を行っている京都精華大学の学生たち(今の若者)は、約30年前の若者の意識のどこに共感をし、違いを感じたのか


「今の若者は、生活全体において、まさつを回避し最小にしようとしています。(中略)それも、意図的というよりも、無意識にまさつが起きそうなことを察知し、自然に回避しているようです」

さて、この若者像にあなたはどのくらい納得感を持ったでしょうか。実はこの文章は、1994年に博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)が行った「若者」調査(首都40km圏/19~22歳未婚男女1000人/訪問留置自記入法/1994年1月実施)の報告書からの抜粋です。しかし、2023年現在の若者についての説明、と言われても違和感はほとんどないのではないでしょうか。

「最近の若者は……」という議論がされるとき、暗黙の前提として“昔と違って”というニュアンスが含まれているはずです。しかし、本当にそうなのでしょうか。実はどの時代でも、“若者の特徴”として語られ続けていることもあるのではないでしょうか。

そこで今回は、生活総研が行ったこの1994年当時の若者研究の報告書を、私たちと共同で若者研究を行っている京都精華大学の学生メンバーに読んでもらい、今と昔の若者で本当に違う特徴は何か、そして実は傾向が大きく変わっていない特徴はないのか、読み解きを試みました。

違いを感じるのは友人関係と恋愛関係の意識

まずは約30年前、1994年の報告書で語られている当時の“若者の特徴”の中で、今の若者である大学生の皆さんが「これは自分たちとは違うな」と感じたポイントを見ていきましょう。

1つ目は、友人関係についての以下の記述です。

「若者はとにかく淡々としている。(中略)人付き合いは、濃密なものより、さっぱりしている方を好み、(中略)自分たちでグループ名をつけたい熱い集団をもつ人も少数派である」(データは図1参照)

約30年前の若者は人間関係をどう感じていたのか……

 

30年前の若者の友人関係はさっぱりしていたようですが、上東祐奈さん(20歳)は、今とは少し違うと感じたようです。

「実体験として、中高のときは仲の良い友達同士では自分たちでグループ名をつけていた。同学年の中でグループ名を持つ集団は5つほどあったので、(1994年の報告書に書かれているような)“少数派”ではないと感じる。

また、SNSで友達や恋人などの写真や動画の投稿をよく見るので、人付き合いが“さっぱり”していて、思い入れのない姿勢というのもあまり感じない」そうです。

今28歳の私自身も、会社の仲良し同期とのSNS上におけるチャットにはグループ名をつけています。友達同士でグループ名をつける機会は、30年前より今の方が増えているのかもしれません。

また、久保和真さん(20歳)は、「野球が始まる午後6時になったら、野球好きの友達とか、兄弟と自然とインスタのDMに集合して話したりしている」とのことです。

離れた場所にいたとしてもオンライン上に集まって、同じコンテンツを視聴し、感想をシェアし合うのが好き、という意見は他の学生からもありました。私自身もここ数年流行している恋愛バラエティーショー番組は、コンテンツ自体の面白さに加えて友達同士で感想を言い合うのが楽しくて見ていました。

今の若者は30年前に比べてリアルで行動を共にすることは減っているかもしれません。ですが、それだけで関係がより希薄化していると考えるのは早計。現代ならではの人付き合いの濃密さも生まれているようです。

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

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