昔と今ではどうも[みんな]の量も質も変化しているようです。その変化の要因を生活者自身にも考えてもらいたいと、生活総研は考えました。そこで、全国の20~69歳 男女1,000人に次のような実験をしてみたのです。それは、私たちが以前から行っている[みんな]研究の調査結果を、生活者にみてもらった上で、その結果の理由や時代背景を考えて解説してもらうというものです。実験的な試みですが、協力していただいた生活者からは、バラエティに富んだ鋭い視点が提供されました。
一般の方々に次のような質問を投げかけました。
顔見知りの[みんな]から、
ネットの[みんな]へ
「みんなが指す対象が、親類や近所の顔見知りから、ネット上にいる人びとになったのではないか。」
(36歳女性)
「ネットが広まった世の中では、みんなという範囲は世界中を意味するから。」
(57歳女性)
基準が人気アカウントに
「SNSが全世界に普及し、有名人のフォロワー数などを鑑みると、172人くらいのインパクトでは多い人数とは感じられなくなった。」
(42歳男性)
「SNSが普及し、いいねやリツイートの数などが思考ベースにあってその数が圧倒的に多いほうが情報として根拠がある、人気、みんなの意見って思う人が増えた。」
(21歳女性)
ひとつの意見に同調する人の増加
「何ごとも、例えば食べ物がおいしいかどうかも人に決めてもらっているように、自分の意見を言える人が減り、結果みな同じ傾向に向かっているから。」
(60歳男性)
「選ぶのが面倒な人や周りの意見に合わせるほうが楽と思う人が多くなった。」
(42歳女性)
意見の多様化が前提認識に
「自分以外の人の考えが多様化しても、それを認めようとする気持ちが出てきたから、より多くの人が賛同しないと「みんな」とはならなくなってきた。」
(61歳女性)
「これだけの人数が言わない限り「みんな言っている」ことにはならない、ということは10年前よりも個人が尊重されてきている証拠。」
(63歳女性)
SNSによる関心の広がり
「SNSなどが発達したことで、自分の興味がないものでも知る機会が増えたからかな。」
(38歳女性)
「SNSの発達により、少数意見や一部の人にしか知られていなかったトレンドが一夜にして世の中に知れ渡り始めたため、人々が「ヒットした」と感じる商品の数が増えた。」
(28歳男性)
短命ヒットの量産化
「SNSで流行の変化スピードが速くなり、ヒット商品も次から次へと出てきて、同時期にヒットしている商品が多いから。」
(44歳女性)
「ヒット商品と呼ばれる商品の寿命が短くなり、各年において継続してヒットする商品が少なくなっている。そのため、次々と魅力的な商品が乱立している結果だと思う。」
(36歳男性)
緩くなったヒット基準
「書籍でも1万部売れたらヒットというように、ヒットの定義が広くなりつつあるから。」
(23歳男性)
「最近の流行語ランキングをみると「こんな注目程度でランクインするのかしら」と感じることがあります。大して話題性のないものでも取り上げられる機会が増えているのかなと感じます。」
(54歳女性)
「人びとの細分化された好みに合わせて商品も多様になり、全員にヒットする「大ヒット」商品より、一部の人びとにウケる「中ヒット」「小ヒット」商品のほうが多くなった。したがって、人びとが考える「ヒット」の規準が緩くなった。」
(27歳女性)
「「これ凄い」のハードルが下がって、ちょっと変わっていれば、それを凄いということにしている。突き抜けていることを、それほど素敵と思わなくなったのでは。」
(57歳男性)
全体ランキングと個々人とのミスマッチ
「人びとの興味の対象が分散しているので、ランキング1位付近のものが自分に合ってないと感じるようになった。」
(37歳男性)
「人気かどうかの基準が他人にウケているかではなく、自身や仲間内でウケたかどうか、の人が増えてきているのではないか。」
(28歳男性)
情報に振り回される人の増加
「みんなが同じようなものを選ぶようになった。つまり、自分の選択に自信がない人が増えたから。」
(32歳女性)
「この10年、情報が溢れているので、自分の価値観がしっかりしていないと、それに振り回されていろいろなものに飛びつくことになるから。」
(47歳女性)
出典:博報堂生活総合研究所[みんな]に関する[みんな]の意識調査(全国)
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