ハイライトは、ユーザーに
どんな「価値」を与えていたのか
山下 恵知
TOPICS2026.08.03
― ハイライトロスが教えてくれた、プロフィールの価値 ―
1.ハイライトとは何か
――投稿とは違う、消えないストーリーという仕組み
Instagramの「ハイライト」は、本来24時間で消えるストーリー投稿を、プロフィール上に残しておくことができる機能である。通常の投稿は四角い写真や動画として一覧に並ぶが、ハイライトはこれまでプロフィール上部に丸いアイコンとして配置され、タップすると設定されているストーリーをまとめて閲覧できる仕組みになっていた。
例えるなら、小さなテーマ別アルバムのようなものだ。「旅行」「友人」「制作物」「日常」など、自分で分類し、過去のストーリーを整理することができる。
さらに、ハイライトにはカバー画像とタイトルを自由に設定できる特徴がある。ユーザーの中にはその“場”をデザインする人もいる。一例として色味やデザインを揃え、統一感のある見た目をつくることで、プロフィール全体の印象を整えたりする。
日々流れていく投稿(ストーリー)の中で、あえて残すものを選ぶ。その場をデザインしプロフィールの一部としてSNSでの名刺がわりの役割を形成していく。それがハイライトである。
(例「2026年2月28日時点]・現在は元のハイライトに戻されている)

2.アップデートがあった日、ユーザーたちは何を失ったのか
――ユーザーから見た「ハイライトロス」という現象
2025年9月12日。Instagramのハイライトは、プロフィール上から投稿欄へと移動し、形状も丸から四角へと変更された 。一見すると小さな仕様変更に思えるが、多くのユーザーにとってはそれ以上に大きな出来事だったようだ。
この仕様変更をきっかけに、ユーザーの間ではハイライトに対する認識が変化した。ユーザーからは、「ハイライトの意味を失った」 「投稿の一部になった」「興味のわかない消費コンテンツになった」「ハイライトがリールのように連続した一つの動画のように見える」「投稿欄を汚す存在になった」「開いてもらえないものになった」といったマイナスな行動に移ったという声が挙がった 。
またこの現象の影響で、Instagramユーザーの行動面でも変化が生じている。具体的には、「ハイライト を開かなくなる」「消去やアーカイブを行う」「デザインしたものが混ざることで汚いプロフィールが出来上がり、更新のモチベーションが低下する」などの行動が挙げられる。
一方で、「仕様変更が一時的なものかを確認するために情報を調べる」「四角に適応したデザインを考える」「投稿との区別を試みる」 といった対応も見られた。 このように、ハイライトの位置や形状の変更は、利用者が感じていた意味や役割、さらには利用行動にまで影響を及ぼしている。この仕様変更をきっかけに生じた一連のユーザーの心情や行動の変化全てをこのコラムではまとめて「ハイライトロス」と呼ぶ。
3.ハイライトロスから見えた5つの価値
――ユーザーの投稿の不満データから見えた魅力
実際にハイライトロスに対して、利用者は何に不満を抱いていたのか。その要因を明らかにするために、2つの調査を行った。ひとつはX上の投稿を対象としたテキストマイニング分析、もうひとつはハイライトロスを経験したユーザー9名へのインタビュー調査である。
テキストマイニングによる調査から得られたデータを分析すると以下のような5つの要素が見えてきた。
A.形状が丸から四角へ変わったこと
B.投稿とハイライトが区別できなくなったこと
C.表示位置がプロフィール上から移動したこと
D.ハイライトのタイトルが開かないと見えなくなったこと
E.プロフィールを自分の色にデザインしてきた努力が仕様によって崩された
これらのデータをインタビュー(質的調査)に落とすと、
ハイライトが以下のような価値を持っていたことがわかった
A.丸には気軽に見てもらいやすいアイコン的なデザイン性があると受け止められていた。また、投稿との形状での区別するために丸であって欲しかった。
B.投稿とハイライトが、離れて配置されている構造に価値があった。投稿と交わることでハイライトの本来の価値を発揮できなくなっていた。
C.Instagramのプロフィールは交換した際に最初に見られる場所であり、入り口での自分の印象づけと投稿よりもハイライトを見てほしいという思いがある。
ハイライトはプロフィールの一部であり、ハイライトをデザインすることはプロフィールをデザインすることと同様であった。そのためプロフィールにハイライトがあることに価値があった。これにはセルフブランディング要素も含まれる。ここにはInstagramを交換した際に投稿よりもハイライトを先に見るというユーザーの行動ともマッチしているそう。
D.独自の文字や記号の並びを使って自分の世界を表現しているユーザーもいた。
そのため、プロフィール上にハイライトタイトルが表示されることで
自分を表現する一つの要素となっていた。
例:p°、500y=プリクラ、^5_=友達、他:ih! 、mgmg 、5iv、o/, ᨒ𖡼.𖤣𖥧 、♡ꜝ:(˘•̥ など…
これがプロフィール欄からなくなることにより、自分を表現していた文字での表現が機能しなくなっていた。
E.ハイライトが今の位置・形状・機能であることによって“自分らしさ”を表現する最適な場となっている。そのためユーザーが自由な自己表現を行っていた。そこに仕様変更による外的な影響が加わったことで、これまで作り上げてきた“ネット上での見せたい自分”が上手く機能せず“他人に見せたくない、見せられない物”に変わったことに不満を持っていた。
この影響でハイライト自体の消去や、モチベーションの低下といった行動につながっていた。
4.ハイライトを消した私
――私が感じた“壊された感覚”
アップデートによって、いつもあったプロフィール上のハイライトが消えた瞬間、私は強い寂しさと悲しさを覚えた。投稿とハイライトの区別がつかなくなったこと。時間を費やした“いつもの”構造が崩れ、これまで時間をかけて設計してきたネット上の自分が、一瞬で別物になり消えてしまったように感じたこと。その感覚が、何よりも悲しかった。
私はハイライトをただ保存機能として使っていたわけではなかった。旅行、制作物、日常の記録。それぞれを分類し、カバー画像を揃え、順番を考え、タイトルを設定し、プロフィールを訪れた人がどのように自分を見るのかを意識して整えてきた。それは小さなセルフブランディングの実践であり、“いつもは遠慮して出せていない自分らしさ”を形にする作業でもあった。
しかし仕様変更によって、作ってきた“伝えたい自分”が“見せられないもの・見せたくないもの”に変わってしまった。ハイライトは投稿の中に溶け込み、ハイライト自体の役割が曖昧になった。私はこういった背景から、最終的にハイライトを消去したユーザーの一人である。ハイライトロス当初は残すという選択もできたが、そこにはもう以前と同じ意味を見出せなかった。
この経験から、私はハイライトはプロフィール上における「自己表現の場」として機能していたと考える。ユーザーは色味や世界観をハイライトで作成し、自分らしい印象を形成してきた。それは、情報を残すだけの行為というよりも、「どのように見られたいか・どんな自分を見せたいか」を設計する場であったと感じる。ハイライトはユーザーにとって、自分らしい生き方を何からも影響されず、最大限表現する自己表現を成立させる土台であったのではないかと考察する。
5.失っていたのはUIの構造ではなく「自分らしさを表現できる場所」
――ハイライトが提供していた「見てほしい自分」という価値
本稿で見てきたハイライトロスに対するユーザーの反応は、単なるUI変更への不満ではなかった。丸から四角へという形状の変化、位置変更による投稿との区別、プロフィール上からの移動、タイトル表示のプロフィール欄からの損失、そして制作してきた努力が崩されたという感覚。私の経験やユーザーの不満を丁寧に辿っていくと、共通して浮かび上がるのは、ハイライトが「本来の見せたい自分らしさを形成し伝えられる場所」であったという事である。
私は現代の社会へ、誰かの視線や評価を気にしながら生きていくことに息苦しさを感じる。私はそれに全力で抗って自分を常に持ち自分らしく生きられるように意識している。誰の視線も気にせず誰の評価も気にせず、自分らしさを自分の手で、自分なりのデザインで、自分なりの表現で“伝えきれていない本当に見せたい自分”をInstagramのプロフィールに形成すること。SNSの中でも、名刺のような役割をするInstagramで表現する、誰にも何にも邪魔されない自分らしさの表現。これらが機能しなくなったことが、ハイライトロスに感じた喪失感の正体なのではないだろうかと、インタビューや調査を通じて改めて感じた。
