Part.1 [みんな]を巡る問い

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Yahoo!知恵袋の質問2億件を分析する

デジノグラフィで探る[みんな]の悩みと疑問

大手Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」には、過去15年間でなんと約2億件の質問が寄せられています(2018年12月現在)。生活総研は生活者観察手法(エスノグラフィ)の視点でデジタルデータを分析するアプローチ、 「デジノグラフィ」を提唱しており、2億件もの[みんな]の悩みはうってつけの分析対象です。運営元のヤフー株式会社のご協力のもと、その一端を探りました。

「みんながどうしているか」知りたい
カテゴリとは?

分析で着目したのは、Yahoo!知恵袋の質問のなかでも、特に「皆さんは」というワードが文中に入っている質問はどんなカテゴリで多いのか、という点です。「皆さんはどうしていますか?」「皆さんはどう思いますか?」というような聞き方をよくされる、つまり[みんな]のことが気になる、人並みを探りたくなるのは、どんな分野なのでしょうか。

「皆さんは」と呼びかける質問の出現率は、全体のおよそ1.25%。約250万件でした。質問のカテゴリごとでも出現率を算出し、縦軸に出現率、横軸にそのカテゴリ内の総質問数を置いたのが下のグラフです。

「皆さんは」の出現率が高いのは、「生き方と恋愛、人間関係の悩み」「ニュース、政治、国際情勢」「マナー、冠婚葬祭」「子育てと学校」などとなっています。
特に「生き方と恋愛、人間関係の悩み」はカテゴリの質問数も多く、最も[みんな]のことが気になる領域といってよさそうです。そのなかの細かいカテゴリ区分を見てみたところ、シニアライフや一人暮らし、それに職場や友人、家族との人間関係についてのカテゴリで特に出現率が高いことがわかりました。
そのほかについても細かいカテゴリ区分で出現率を見ると、貯金や家計、節約、ギャンブルといった、お金に関する質問でも、「皆さんは」と多く問いかけられていることがわかりました。これらの分野は販売部数が多い書籍分野とも共通性がみられます。

答えがないから[みんな]が気になる

逆に、「教養と学問、サイエンス」や「スマートデバイス、PC、家電」、あるいは「コンピュータテクノロジー」など、専門性が高く、事実として明確な答えのあるカテゴリでは、「皆さんは」という問いかけの出現率は低くなっています。
[みんな]のことが気になる、人並みを探りたくなる分野というのは、多くの人が体験したり直面しているテーマである一方、明確な答えがあるわけではなく、web検索してもなかなか判断がつきにくい分野、と捉えることもできそうです。

また、人間関係や生き方といった近接性の高い問題の場合、逆に身近な人には相談しづらいからこそ、本音を打ち明けて相談できる場所として、匿名性の高いQ&Aサイトに救いを求める傾向も感じられます。
分析を行ったメンバーからは、「物理的接触の濃密さこそ『リアルかつ親密』と考えるのが一般的だが、今はリアルよりもバーチャルのほうが親密な関係が築けることも増えている。ネットによって自分と同じ価値観の集団をみつけることが容易になったのも一因かも」という意見もありました。

「皆さんは」とセットで
最も頻出する言葉は「自分」

続いて「皆さんは」というワードが入っている質問には、ほかにどのようなワードが入っているのか、いわゆる〝共起語〟を見てみます。

共起語として最も頻出していたのは「自分」です。最も細かいカテゴリの区分で見ると、約500カテゴリ中486カテゴリで共起されており、ほぼすべての質問分野において「皆さんは」とセットで使われています。
特に、ビジネスや経済、お金、家計、貯金、ギャンブル、耐震、ダイエットについてのカテゴリでは頻出しており、「自分はこうなんだけど、皆さんはどうですか?」といった比較をしたい文脈で使われやすいことが想定されます。
ほかにも、内容、最後、通り、未来といったワードも共起語に挙げられます。「未来」は、例えば耐震というカテゴリで頻出しており、未来に起こるであろう地震に対しての意見を求めているのでしょう。

また、カテゴリごとに共起語を見ても発見があり、例えばマナーのカテゴリでの共起語では、『電車』というワードが上位にランクインしていました。「みんな化語」に関する分析でも冒頭で電車内のマナーに関するエピソードが出てきますが、これは多くの人にとって気になるトピックだということが、この分析でも示されました。このように、一緒に使われている言葉ひとつとっても、生活者の行動予測やモチベーションの変化などを推し量ることができるのです。

実は欲しいのは賛同してくれる[みんな]?

分析メンバーからは、「ある人の常識が他人の非常識になってきている状況も背景にあるのではないか。常識が分かれてしまっているからこそ、自分はこう思うけど、みんなはどう思うか……ということで悩む状況が増え、それが質問につながっているのでは」という意見もありました。

さらに深読みをすると、「実は[みんな]の答えが欲しいわけでもなく、皆さんはどう思うか、と聞きつつも自分に賛同してくれる人を探しているのかも。悩みを打ち明ける投稿でも、『自分はこう思うけど』ということに対して『私もそう思います』と言ってくれる人を探している。そういうやりとりのなかで、自分の意見を確かにしていくような感覚を得ているのかも」しれません。「自分」が共起語で1位になることにはそんな背景もありそうです。

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