–日経クロストレンド(74)連載–
「おじ」像は令和に劇的変化 モテよりリスク回避で清潔感を意識
「日経クロストレンド」の連載記事です。
「おじさん」のイメージは時代と共にどう変わったのか、変わっていないのか。2026年1月に公開して話題を集めた40・50代女性のイメージ分析に続き、今回は同年代の男性について調査データを基に徹底分析。博報堂生活総合研究所の40代女性研究員が、同じく40代の男性研究員と共に、令和の「おじ」像をひもといた。

(画像/ちーたん/stock.adobe.com)
2026年1月29日の記事「『43.2歳からおばさん』が調査で判明 激変する令和の『おば』像」では、40・50代女性像が、「専業主婦・家庭中心」という昭和的なステレオタイプのお母さん像から、仕事も趣味も美しさも手にする「活・働・美」のマルチタスクでアクティブな女性像へと劇的なアップデートを遂げていることを、当事者である私が令和の「おば」像として紹介しました。
「おば」像の変化が明らかになり、次に気になるのは、やはり「おじさん(おじ)像」はどうなのか、ということではないでしょうか。
そこで今回は、令和の「おば」像の続編として、『-30年調査でみる-哀しくも愛おしい「40代おじさん」のリアル』(日経BP)筆者であり、「40代おじさん」研究でクロストレンド読者の皆さんにはおなじみ、おじさん当事者であり研究員の前沢裕文の考察も交えながら、令和の「おじ」像のアップデートとその背景にある社会変化や彼らの意識や欲求をひもときます。
今回は、3都市圏(首都圏、名古屋圏、阪神圏)の20~69歳男女1271人に対して、40・50代男性のイメージについて調査を実施。その結果から見えてきたのは、家庭から社会へと躍進する「おば」像の変化とは異なり、一家の大黒柱としての絶対的な存在から、家庭や職場での配慮に意識を高めながらも、自分に軸足をシフトしつつある「おじ」たちのリアルな姿でした。
「おば」像変化より多数が実感! 数字で見る「おじ」像の変化
まずは、「おじ」像の変化を実感している人がどの程度いるのかを定量的に見てみましょう。
「あなたは、過去(10年以上前)と現在で40・50代男性の実態は変化していると思いますか」という質問に対し、「変化している」と答えた人は、全体で73.4%に上りました(図1)。これは、40・50代女性についての変化実感(図2)のスコア(59.0%)より、14.4ptも上回っています。
【図1】40・50代男性イメージの変化実感
【図2】40・50代女性イメージの変化実感(参考)

さらに40・50代男性のイメージについて、男女別・年代別で見ると、40・50代男性の変化を実感している人が、女性で76.3%、男性は70.6%と、男性と比べて女性が5.7pt高く、中でも40代以降の女性では8割近い数値となっています(図3)。
【図3】男性のイメージの変化実感(性年代別)

前回の40・50代女性に対しての変化実感では、「当事者(女性)」のスコアが非常に高かったのに対し、40・50代男性については「異性(女性)」のほうが高くなっています。
これは、女性たちが家庭や職場での変化を認識していることの表れかもしれません。
では具体的にどう変わったのか。過去と現在の「おじ」像イメージに関する自由回答のランキングをご紹介します。
劇的な変化を遂げた令和の「おじ」像
「あなたが『40・50代男性』と聞いて思い浮かべるイメージは、どういったものですか」という質問で、過去(10年以上前)と現在について、それぞれ想起することの自由回答を集計して上位10位までをランキング形式でまとめました(図4)。

いかがでしょうか。過去と現在で全く異なるイメージワードが並んでいることが分かっていただけると思います。
この激変を5つのポイントで読み解いていきましょう。
(1)「仕事人間」から「イクメン」へ
最も大きな変化は、「仕事人間・モーレツ社員(1位:142件)」から「家庭的・イクメン(1位:156件)」への変化です。かつての「おじ」の代名詞であった「仕事一筋、モーレツ社員」というイメージは消え去り、現在では「家事育児に協力的な、家族を大事にするパパ」へと様変わりしています。

以前は、終身雇用と右肩上がりの経済という社会環境の下、家庭を顧みず仕事にまい進することこそが家族のためでもあり、美徳とされていた時代でした。しかし、終身雇用制度が揺らぎ、働き方が多様化する中で「会社」から「家庭」に軸足がシフトしてきていることがうかがえます。
(2)「稼ぐ責任」から「ケアする責任」へ
次に注目すべきは、かつての「おじ」像の「威厳・一家の大黒柱(2位:128件)」と令和の「おじ」像の「フラット・謙虚(6位:73件)」です。
以前は、家族の扶養や会社の業績への貢献といった「稼ぐ」ことが「おじ」の最大の責任であり、そこには家父長制的な強さや管理職としての権限が伴っていました。そのため、家庭内での「無口・不愛想(8位:41件)」も許容されていたのかもしれません。しかし令和の「おじ」像では、共働きの一般化により夫婦の関係は対等になり、家事や育児への積極的な参加は当たり前に。加えて妻への感謝や感情的なケアまでも重要なタスクとして「おじ」に求められていることが分かります。

またハラスメントへの厳罰化により、威厳や強さは時としてリスクとなることもあり、家庭や職場でのコミュニケーションが、上からの「命令や指示」や「背中で語る」ものから、対等な目線での「対話や共感」など「言葉で伝える」ものへとアップデートしつつあります。
もはや「仕事と家庭、どっちが大事?」という時代でないことは多くのおじさんが実感しているところだと思います。1と2の結果を見ても、仕事と家庭は対立的に捉えるものではなく、どう両立させていくか、うまい両立のさせ方を編み出せるおじさんが“良おじ”なのでしょう。
「生活定点」において「家事・子育てや仕事での役割を、夫婦のうちその時にできるほうがやっている」と答えた人の割合は、男性全体の2024年時点で32.6%と3割を超えています。中でも40代男性は35.1%、60代男性も35.6%と、いずれも男性全体の平均を超えており、いつも妻任せというおじさんは少しずつ減ってきているのかもしれません(図5)。
【図5】家事・子育てや仕事での役割分担意識の推移

まだまだ例としては少ないものの、近年は男性国会議員が育休取得を表明したり、プロ野球でも今季から出産立ち合いなどで出場選手登録を外れた際に短期間で復帰できる制度を導入したり、社会全体で男性の役割の変化を後押しする動きも見られます。
役割の変化に加えて、会社内・家庭内でのコミュニケーションの変化も注目です。威厳があり無口というある種どっしりとした過去おじから、フラットで謙虚な物言いをする令和おじへ。おじの頼もしさが、強さからやさしさ・やわらかさに移り変わってきていることがうかがえます。
「おじ」イメージ激変ポイント、残りの3つは?
(3)「無頓着」から「マナーとしての清潔感」へ
周囲への気遣いや配慮は、見た目や意識の変化にも表れています。
かつては「不摂生・タバコと酒(4位:85件)」「身なりへの無頓着さ(6位:64件)」が上位に挙がっていましたが、現在は「清潔感・美容意識(3位:118件)」「健康志向・自己管理(7位:67件)」に変化しています。
これは「モテたい」という欲求からくるものではなく、おじさんに対するネガティブな印象を避けるためのマナーとしての必要条件であることが自由回答からうかがえます。

「40・50代男性イメージ」調査

「40・50代男性イメージ」調査
おじさんの見た目については、SNSでも度々議論が繰り広げられます。パーカーは是か非か、ハーフパンツは是か非かなどなど、「おじさんは見た目が10割!」と言わんばかりに、その見た目に視線が注がれる今、身なりに無頓着でいることはリスクですらあります。無頓着さや豪快さが男らしさと受け取ってもらえる空気は薄れ、らしさの前にそもそも人として清潔にすることが求められているわけですね。
「健康意識・自己管理」をする世代という意見も数多く挙がっています。ひと昔前には、寝てない自慢、昨日飲みすぎた自慢といった、不摂生自慢をするおじさんが大勢いました。それが「パワフル・エネルギッシュ」に見えていた面もありそうです。今となっては、翌日に影響が出るような徹夜、二日酔いをしないことは、身だしなみと同様に、マナーと考えたほうがよいでしょう。
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<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
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