私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

50代女性の「料理好き」が激減
作るのが苦痛になった要因とは
–日経クロストレンド 連載㉙–

生活総研 主席研究員

夏山 明美

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

なぜか「料理好き」の割合が50代女性で激減している。博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」や「料理に関する生活者調査」の結果をひもとくと、食に対する生活者の意識の変化が浮かび上がってきた。なぜ特定の世代で「料理好き」が減っているのか、またその意味するところとは。博報堂の研究員が徹底分析する。

生活定点」調査から見えてきたのは、ある世代で料理好きが激減しているという現象だ。その背景にあるものとは(画像/Shutterstock)

本連載の第25回「“料理好き”減少! どこからが手料理? 調査で分かった新定義」では、博報堂生活総合研究所「生活定点」調査で「料理を作ることが好き」な人が減っていることに注目しました。実はこの項目を性年代別で見ると50代女性が質問開始の1998年から2020年にかけて激減! 直近ではついに女性年代別で最下位となってしまったんです。なぜ50代女性で料理好きが減るのか、当研究所の「生活定点」「料理に関する生活者調査」などを分析したところ、男女雇用機会均等法第一世代とも呼ばれるこの世代ならではの意識が浮かび上がってきました。

第25回はこちら

50代女性で「料理好き」が激減、女性年代別の最下位に

まず、こちらのデータをご覧ください。1998年の質問開始時、「料理を作ることが好きな方だ」という50代女性は54.5%で女性計(46.3%)を大きく上回っていました。しかし、その後、50代女性の料理好きは、2016年の一時的な増加を除き、全期間で減少しています。

■「料理を作ることが好きな方だ」の回答率の推移

そして、直近の2020年調査で35.4%まで落ち込み、ついに女性年代別で最下位となってしまいました。ちなみに、このスコアは今の60代女性が50代だった頃(2010年時点 50代女性のスコアは43.9%)と比較しても-8.5ptと低いですから、今の50代女性の料理好きの少なさは、どうやらこの世代の特徴ともいえそうです。

■「料理を作ることが好きな方だ」の2020年の回答率(性年代別)

料理好きでない理由で目立つ“面倒・苦痛”

なぜ、50代女性で料理好きが少ないのでしょうか。2021年に実施した「料理に関する生活者調査」(首都圏・阪神圏・名古屋圏/20~69歳男女1500人/インターネット調査/2021年8月実施)で料理が好きでない理由を見ると、「作ること自体が面倒くさく、楽しいと思ったことがない」(50歳女性)、「毎日献立と調理の手間を考えることが苦痛になる」(59歳女性)といった声に代表されるように、“面倒・苦痛”といった言葉がずらりと並びます。

「こんなに“面倒・苦痛”だらけっていうことは、料理下手だから?」とつい思ってしまいます。でも、鎌倉で大人気の“作らないで見ているだけの料理教室”を主宰する本多理恵子さんの著書『料理が苦痛だ』(自由国民社)の中には、「“料理が嫌いな人”は決して“料理が下手くそな人”ではない」とも書いてあります。実際のところ、どうなんでしょう。

この疑問を明らかにすべく、「料理に関する生活者調査」を分析してみました。「料理作りの知識や技能がある方だ」という50代女性は44.5%、性年代別2位で全体との差も+8.4ptと高くなっています。

ちなみに女性は年代が上がるにつれ、スコアも上昇していきます。しかし、男性は女性と違い、20代、30代、40代といった若い年代が35%前後で高め。特に、20代男性(35.2%)は20代女性(29.7%)を+5.5pt上回っていますし、30代男性(35.7%)と30代女性(34.5%)はほぼ同等(1.2pt差)。若い人たちの間では、料理作りのジェンダーレス化が進んでいるようです。

一方、50代女性の夫が多く含まれるであろう50代男性は、性年代別の最下位で26.6%。50代女性と17.9ptの大差が開いています。仮に50代同士の夫婦だとすると、知識や技能の圧倒的な違いから料理はついつい妻まかせ、なんてことになっている可能性が見えてきます。

■「料理作りの知識や技能がある方だ」の回答率(性年代別)

次に、「得意なこと」を調理工程ごとに見てみましょう。50代女性のトップ3は「食材を煮る(76.8%)」「食材を焼く(76.2%)」「食材を買う(75.0%)」。いずれも4人中3人にあたるハイスコアです。先ほど料理好きでない理由としても挙がっていた「献立を考える」は順位が低めではありますが、それでも3人中1人にあたる32.9%が得意だと回答しています。

ここで最も注目したいのは、この質問で提示した14の調理工程すべてにおいて、50代女性のスコアが全体計・男性計はもちろんのこと、女性計をも上回っていることです。50代女性に料理好きが少ないからといって、料理下手かというとそういうわけでもない。いや、むしろ、料理上手といったほうがよさそうです。

■「得意なこと」の回答率 (50代女性の回答率でランキング)

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

 

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