私の生活定点

博報堂生活総研による定点調査「生活定点」を見て気づいたこと、
発見したことをさまざまな人が語っていくリレー・エッセイです。

2023.04.14

リビングでブームの「ヌック」とは
調査で判明、住空間の新潮流
–日経クロストレンド 連載㊴–

生活総研 上席研究員

佐藤 るみこ

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

家や部屋の使われ方を見ていくと、生活の変化が明らかになる。博報堂生活総合研究所の研究員が、さまざまなデータを基に生活者の消費や行動の変化を追う本連載の第39回、着目したのは「住」だ。なにやらリビングの使われ方に変化が起きているという。その変化と理由とは。

コロナ禍以降、テレワークの定着などで以前に比べて家の中ですごす時間が増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、博報堂生活総合研究所のデータを基に、衣食住の中でも生活の舞台となる「住」に関する生活者変化についてご紹介します。どうも家の間取りの中で、リビングと個室の位置づけが変わってきているようなんです。

リビングと個室の位置づけが変わってきている?その背景にあるものとは(画像/Shutterstock)

充実させたいのはリビング? それとも個室?

博報堂生活総研がWeb上でデータを公開している長期時系列調査「生活定点」の中にはさまざまな分野に関する調査項目が存在しています。その中でも「住」に関するある意識の項目で気になる傾向がありました。「個室よりも家族で一緒にすごすスペースを充実させたい」と答えた人は1998年には約半数の49.3%存在しましたが、それが徐々に減少し、直近では30.3%にまで減っていたのです。

この結果をシンプルに解釈すれば“家族で一緒にすごすリビングや居間よりも個室の方を充実させたい”という意識が強まっているようにも見えます。

私自身は未就学児の子どもがおり、個室よりも家族で一緒にすごすリビングを充実させたい派なので、この結果は意外でした。もしかすると、社会的にDINKS(子どものいない共働き夫婦)世帯が増加し、子どものいる世帯が減少しているから個室志向が強まっているのでは? と考えて「子あり世帯」と「子なし世帯」に分けて傾向を見てみました。

すると、確かに「子あり世帯」は「子なし世帯」に比べて「家族で一緒にすごすスペースを充実させたい」と思う人が多いものの、時系列で波形を見るとやはり漸減傾向は変わらないことが分かりました。

一方で、一戸建て住宅の展示場やマンションのリノベーションサイトなどでは、個室を小さくしたり、部屋数を減らしたりして、リビングを広くするのが近年のトレンドとして紹介されています。

これは、前述した生活定点で表れている傾向と食い違っているようにも見えます。一体、この矛盾は何なのでしょう。

「寝る」以外の生活行動はリビング派が多数

そこで私たちは生活者に、さまざまな行動をリビングと個室のどちらで行っているのかを聞く「住まいに関する生活者調査」(首都圏・名古屋圏・阪神圏/20~69歳男女1500人/インターネット調査)を23年1月に実施しました。それぞれの行動について、リビングと個室のどちらで行うことが多いのかを聞いた結果が以下の図です。「寝る」に関する行動(「充分に眠る」「昼寝・仮眠する」)は個室で行う人が多かったものの、それ以外の行動はすべて、リビングで行う人の方が多いことが分かりました。

各分野の行動を見てみましょう。「食」に関する行動はリビング派が圧倒的に多い、というのは予想通りでした。ただ「誰かと携帯や音声通話で話す」「誰かとメールやアプリでやり取りをする」といった家族以外とのやり取りまで、個室派よりもリビング派が多いのは少し意外です。さらに「仕事や勉強、宿題をする」「オンライン会議などに参加する」に関してはさすがに個室派が上回るかと想定していましたが、実際はこちらもリビング派が上回りました。

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

 

<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
第1回ーー 「43歳からおじさん」が調査で判明! 「7つの特徴」を大分析
第2回ーー 足りないのはお金より時間 40代おじさんの幸せは“時産”にあり
第3回ーー たこ焼きが1位? 和食が消えた? 好きな料理ランキング大激変
第4回ーー シュフからシェフに! オンラインで「我が家の食卓」が変わる
第5回ーー 40代おじさん必読! J.Y. パーク氏に学ぶ 「褒めワード」ベスト5
第6回ーー 世代間ギャップを学べる魔法の質問 「お金持ちって誰ですか?」
第7回ーー 「お金持ちへの憧れ」は徐々に減る?若者はなりたい自分を投影
第8回ーー 40代おじさんに黄信号 「男女平等感」が世の中とズレている!?
第9回ーー 40代おじさんの意識を精神科医が分析 悲しい性をメッタ斬り!?
第10回ーー40代おじさんの生き様は「30点」? 精神科医による処方箋
第11回ーー40代おじさんはキス派?ラブレター派? 二択から見える意識
第12回ーーZ世代とシニア、上司と部下の板挟みで、40代おじさんは右往左往?
第13回ーー「40代おじさん」の妻は幸せか?夫婦間ギャップに見る危機
第14回ーーロンブー田村淳が思う「かっこいい40代おじさん」とその理由
第15回ーー40代おじさん・ロンブー淳 人生満点じゃない理由は日光東照宮?
第16回ーー奥田民生は「おじさん」をユニコーンの武器にした
第17回ーー40代おじさんに共感? 奥田民生も自信がなくてビビり!?
第18回ーー幸福度は最下位 50代男性を襲う「定年前の3つのブルー」
第19回ーー40代おじさんの人生は最低の50点台 救いの言葉を住職に求めた
第20回ーー犬派と猫派を49項目で徹底分析!性格、価値観、消費行動に大差
第21回ーー子ども思いの「40代おじさん」に送る“ドミニカ流”子育て法
第22回ーーグラドルに聞く&調査に見るおじさんの“発言”が嫌われるワケ
第23回ーー40代おじさんでもすぐ書ける“モテリプ”の三原則とは?
第24回ーー愛される「40代おじさん」の分岐点 弘中綾香アナに学ぶ
第25回ーー「料理好き」減少! どこからが手料理? 調査で分かった新定義
第26回ーー無料で使えるビッグデータ分析ツール3選
第27回ーー「2040年はどんな社会?」1万人が回答した望む未来と望まぬ未来
第28回ーー若者は未来に何を願う? 1万人調査から見えた年代&男女ギャップ
第29回ーー50代女性の「料理好き」が激減 作るのが苦痛になった要因とは
第30回ーー“40代おじさん”の意識はどう変わった? 20年前のおじさんと比較
第31回ーー新旧“40代おじさん”比較第2弾 20年間で仕事愛が激変!?
第32回ーーバブル期の20代と令和の20代、何が違う? 男女の壁が“消滅”
第33回ーー40代おじさん、驚愕の最新調査 劇的なキャラ変&「いい人」化
第34回ーー調査で判明したシン40代おじさんの意識「アナログ」がお好き?
第35回ーー調査で判明 自分で自分を幸せだと思っている人の「2つの共通点」
第36回ーーデータで見る「好きな料理」30年史 ラーメンが“食った”料理は?
第37回ーー30年データで突き止めた新ワード「消齢化」消えゆく年代の壁
第38回ーー「若者をなめていない」 ピース又吉さんに見る新・40代おじさん像

この記事をシェアする

このエントリーをはてなブックマークに追加
私の生活定点

「調理定年」は何歳?調査で分かった「大盛り寿命」「焼き肉寿命」

生活総研 上級研究員
夏山 明美
2024.11.25
私の生活定点

ポパイ・JJ世代が時代の節目?日本人の価値観変化をデータで検証

生活総研 上席研究員
酒井 崇匡
2024.09.03
私の生活定点

家の食卓を「写真」で大調査
生活者の「3つの意外な真実」とは

2024.07.23
私の生活定点

「人前でのキスに抵抗はない」は6% 調査で見えた若者の実像

2024.05.17
私の生活定点

「消齢化」の次は「消性化」?
食で縮まる男女の違い、20代で顕著

生活総研 主席研究員
夏山 明美
2024.04.04
私の生活定点

“生写真”が浮かび上がらせる
日本の食卓 自由化する食生活の実態
–日経クロストレンド 連載㊸–

生活総研 主席研究員
夏山 明美
2023.11.07
私の生活定点

「調理済み食品を使う料理」に
賛成9割。内食と中食の中間に勝機
–日経クロストレンド 連載㊶–

生活総研 主席研究員
夏山 明美
2023.08.29
私の生活定点

「若者をなめていない」 ピース又吉さんに見る新・40代おじさん像
–日経クロストレンド 連載㊳–

生活総研 上席研究員/コピーライター
前沢 裕文
2023.03.09
私の生活定点

30年データで突き止めた新ワード「消齢化」消えゆく年代の壁
–日経クロストレンド 連載㊲–

生活総研 上席研究員
近藤 裕香
2023.02.22
私の生活定点

データで見る「好きな料理」30年史
ラーメンが“食った”料理は?
–日経クロストレンド 連載㊱–

生活総研 主席研究員
夏山 明美
2023.02.15
私の生活定点

調査で判明したシン40代おじさんの意識「アナログ」がお好き?
–日経クロストレンド 連載㉞–

生活総研 上席研究員/コピーライター
前沢 裕文
2022.12.20
私の生活定点

40代おじさん、驚愕の最新調査
劇的なキャラ変&「いい人」化
–日経クロストレンド 連載㉝–

生活総研 上席研究員/コピーライター
前沢 裕文
2022.12.20

もっと読み込む

その他の研究をキーワードから探す