2024.05.17

–日経クロストレンド㊿連載–

「人前でのキスに抵抗はない」は6% 調査で見えた若者の実像

執筆者:生活総研 研究員 加藤あおい

こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。

近ごろの若者は……という言説の背後には、前提として“若者は常に変化している”という先入観が横たわっている。果たして、若者は本当に変わったのか。博報堂生活総合研究所の長期時系列調査「生活定点」データの詳細な分析で見えてきた、今と昔の若者の同じところと変わらないところとは? 20代の研究員がデータを基に切り込む。

(画像:matsu/stock.adobe.com)

長期時系列データだからできる定量的な若者分析

普段、私たちが接する記事や報道では10~20代の“今の若者の特徴”として様々な言説が語られています。30代以上の年代の方々は、「最近はそんなふうになっているんだ。私が若者だったときとは全く違う!」と、衝撃を受けることも多いかもしれません。

一方で、「私も20代のとき、同じだったけどな。昔から若者って、そういうものなのでは?」「これって若者だけの特徴というより、今はみんなそうなんじゃないの?」という疑問を持ったこともあるのではないでしょうか?

どうも、“今の若者の特徴”として語られるものの中には、冷静に考えると今の若者だけ、とは言えないものもかなり含まれているようなのです。

実は2023年9月に私が執筆した記事でも、この疑問について現役大学生への定性的なインタビューを基に分析を行いました。

今回は、博報堂生活総合研究所が実施している20~60代を対象とした長期時系列調査「生活定点」のデータにコウホート(コホート)分析という統計手法を用いることで、より定量的なアプローチで迫っていこうと思います。

コウホート分析には、長期間、同じ手法と設計で調査された年代別データが必要です。生活定点が調査開始されたのは1992年で既に30年間のデータが蓄積されており、まさにうってつけのデータなのです。

若者の特徴を“3つの効果”に分けて考える

コウホート分析は、長期時系列データ上の変化にどんな要因が影響しているかを分析するための統計手法です。変化の要因を、(1)年齢に基づく特徴(年齢効果)、(2)時代に基づく特徴(時代効果)、(3)世代に基づく特徴(世代効果)の3つに分解して、どの影響が最も強いかを調べることができます。

生活定点で1998年以降継続して聴取している項目は990項目あり、その中で20代が一度でも年代別の値として最高値または最低値をとったのは959項目でした。

これらの“若者の特徴”の候補といえる項目についてコウホート分析を行ったところ、3つの変化要因のうち年齢効果を最も強く受けていたのが406項目(42.3%)、時代効果を最も強く受けていたのが212項目(22.1%)、そして世代効果を最も受けていたのが341項目(35.5%)でした(図1)。

言い方を変えると、若者に何らかの傾向が見られた場合、4割くらいは年齢が要因の「いつの時代も変わらない若者の特徴(年齢効果)」で、2割くらいは若者というより「その時代の生活者全体の特徴(時代効果)」として考えた方がよく、本当に世代の影響が強い「今の若者だけの特徴(世代効果)」といえそうなのは残りの4割弱程度、ということになります。

では、3つの効果が見られる項目は、それぞれどのようなものがあるのか探っていきましょう。

【図1】“若者の特徴”候補のコウホート分析結果

長期時系列データをコウホート分析した結果

「いつの時代も変わらない若者の特徴」とは何?

では早速、1つ目の「いつの時代も変わらない若者の特徴」について見ていきます。次の4項目のグラフをご覧ください。(図2、図3、図4、図5)

→続きは日経クロストレンドのページからご覧ください。

 

<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
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