–日経クロストレンド(56)連載–
Z世代が求める「ローリスク仲間」
強まる同性の友人との関係
こちらは「日経クロストレンド」からの転載記事です。
恋愛離れしている、草食化しているといわれて久しいZ世代。私たち博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)が調査したところ、実は同性の友人との関係を驚くほど深めていることが分かってきました。誕生日プレゼントを贈る相手、情報交換や悩み相談の相手…生活領域のあちこちで同性の友人を選択する若者が増えています。この記事では、30年間の社会変化を背景に、Z世代が同性の友だちを「ローリスク仲間」と呼ぶべき特別な存在として捉えている実態を探っていきます。
プレゼントを贈る相手は「同性の友人」
読者の皆さんが、20歳の頃に誕生日にプレゼントを贈ったことがある相手は、どなたでしょうか?
恋人、異性の友だち、母親、父親……色々な方の顔が思い浮かぶことと思いますが、今の若者がプレゼントを贈る相手は誰なのでしょうか。その相手はかつての若者と比べて変化しているのでしょうか。まずは次のグラフをご覧ください。
このグラフは、1994年と2024年に若者を対象として実施した調査の結果を比較したものです。「最近、誕生日にプレゼントを贈った人」という質問に対して、男性では「恋人」が減少した一方で、「男友だち」と答える若者が大きく増えています。
また、女性でも「恋人」が大きく減少した一方で、30年前も多かった「女友だち」がさらに増える結果となっています。いずれも恋人や異性の友だちではなく、同性の友だちに贈るようになっているというわけです。
この結果に象徴されるように、今回の私たちの調査研究における大きな発見の一つに、「同性の友人」が、若者にとって非常に重要な存在になってきているようだ、ということが挙げられます。
生活総研では、24年1~2月にかけて19~22歳の未婚男女を対象とした「若者調査」を実施しました。先ほど紹介した調査結果もその一部です。
対象者は02~05年生まれで、世代で見るとZ世代(1990年代半ばから2010年代初頭生まれ)の真ん中当たりに位置します。また、30年前の1994年1月にも、当時19~22歳だった団塊ジュニア世代を対象に同じ調査手法、調査項目での調査を実施しています。
つまり今回の調査と1994年調査のデータを比較すれば、ちょうど“30年たった若者の意識や行動における変化”を観察することが可能になっています。前掲のグラフもその結果の一つです。本記事では主にこの“30年という時をまたいだデータ”を使って、若者の変化を探っていきたいと思います。
今回の調査結果からは、若者が「母」、そして「同性の友人」との関係を強めてきている様子が分かってきました(「母」との関係の強まりについては2024年9月9日公開記事「Z世代の親との関係性が30年で激変 『メンター・ママ』って何?」で紹介しています)。
これは、しばしば「恋愛離れ」や「草食化」が指摘される若者の、今まで見えにくかった重要な側面と言えそうなのです。一体、若者の交友関係はどう変化しているのでしょうか。
友人関係がリセットされない時代
まず指摘できるのは、友人関係を取り巻く環境の変化です。次のグラフは、「大学入学時に新入生が利用しているSNS」を示したものです。
東京工科大学が14年から調査しており、かつて3つだったSNSが今では7つにまで増えています。好むと好まざるにかかわらず、高校時代以前からの友人と、何かしらのSNSでつながったまま進学するようになりました。
つまり「友人関係がリセットされにくい環境になった」というわけです。
40倍に増えた中高一貫教育校
学校制度も変化しています。下のグラフは2000年以降の、中高一貫教育校の数の推移です。
1999年の制度変更を機にその数は急増し、かつての17校は、2022年に673校と約40倍にまで達しています。6年という長い時間、入れ替わりの少ない友人関係の中で過ごす若者が増えていることは、友人関係がリセットされにくい環境の形成に影響していると見られます。
数はいらない? Z世代の友だち観
そんな友人関係が自然と蓄積されていく環境の中で、友だちの数自体を増やしたがらない傾向がこの30年間で強まっています。
「友だちは気の合った者がいればいいか?」もしくは「友だちが多ければ多いほどいいか?」という選択では、「気の合った者がいればいい」を選ぶ若者が大多数にまで増えています。
つまり「数を求めるよりも、絞られた、気が合う友だち」を求める傾向が強まっているわけです。
→続きは「日経クロストレンド」のページからご覧ください。
<日経クロストレンド「30年のデータで解析! 生活者の変化潮流」>
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